- 介護保険制度のしくみ
- 介護保険によってどのようなサービスを受けられるのか
- 介護が必要になった際に何をすればいいか
- これから介護保険を納める予定の方
- 介護サービスの利用を検討している家族がいる方
- 自分に介護が必要になったときのために備えたい方
介護保険制度とは
ひとことで言うとどんな制度?
高齢化の進展に伴い介護ニーズが高まり、また核家族化の進行などによって、高齢者を支える家族の状況が変化しました。
そこで高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを整えるため、1997年に介護保険法が成立し2000年より施行されました。
介護保険制度は被保険者が皆で保険料を負担して、必要な方に給付する仕組みになっています。給付を受けるには手続きや受けられるかどうかの審査も必要です。
誰のための制度なのか
介護が必要な高齢者全員のための制度です。
現在介護の必要がなく生活している方も、将来介護が必要になる可能性があります。そこで40歳以上のすべての方が全て介護保険に加入が義務付けられています。
介護保険制度の被保険者は、以下の2つです。
- 65歳以上の者(第1号被保険者)
- 40~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)
原則として、サービスの対象者は第1号被保険者となるため、65歳以上の要介護状態または要支援状態になった方が、自己負担額1割で介護サービスを利用できます。
ただし、この条件以外にも受給できる場合や自己負担額が異なる場合もあります。
受給できるサービスとともに詳しく見ていきましょう。
・65歳以上の被保険者(第1号保険者)
介護保険被保険者証は65歳以上の方に交付されますが、保険者証を持っているだけではサービスの受給はできません。
希望するサービスを受給するためには介護認定を受け、要支援・要介護状態と判定されなければなりません。
・40歳から64歳の被保険者(第2号保険者)
65歳以上の高齢者に多く発生している老化に起因する疾病(下記、16項目の特定疾病)により介護認定を受けた場合に限りサービス受給の対象となります。
またその疾病は3~6ヶ月以上継続して要支援・要介護状態となる割合が高いと考えられるものに限られます。
<特定疾病>
- がん(医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護認定を受けたら
介護認定を受け要介助・介護の判定を受けたら、ケアマネージャーを探してケアプラン(介護サービス計画書)の作成を進めることになります。
ケアプランとは判定された介護認定によってどのような介護サービスをどの程度利用していくのかを決めるものです。希望する生活(自立した生活)のために、ご自身やご家族の希望などを伺いながら、介護の専門である介護支援専門員(ケアマネージャー)が必要なプランの組立を行います。
ケアプランが決定すると、実際の介護サービスが開始となります。
何歳から加入?加入は必須?
40歳になると介護保険に加入が義務付けられ、保険料を支払うことになります。
40歳から64歳までの被保険者は加入している健康保険と一緒に徴収されます
65歳以上の被保険者は、原則として年金から天引きされ市区町村が徴収しています。
被保険者が第2号被保険者に該当しない場合であっても、被扶養者*が第2号被保険者に該当する場合には介護保険で被保険者の扱いになり、介護保険料が発生する場合があります。
*被保険者によって生計がなりたっているもののことで、例として配偶者・子・両親など3親等内の親族など
保険料はいくら?
日本の介護保険料の計算は、被保険者の所得や年齢などに基づいて行われます。
介護保険料の計算方法は第1号保険者と第2号保険者で異なり、さらに第2号保険者の中でも加入している保険によって計算方法が変わります。
第2号保険者で、サラリーマンや公務員のように国民健康保険以外の医療保険(例:協会けんぽや共済組合など)に加入している場合
介護保険料の納付は、事業主が保険料の半額を負担します。
保険料の金額は月々の給与と賞与によって計算され変動します。
◯給与にかかる介護保険料の計算式
介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率
標準報酬月額とは、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した額です。
◯賞与にかかる介護保険料の計算式
介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率
標準賞与額は税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた額です。
・第2号被保険者で国民年金保険に加入している場合
国民健康保険に加入している場合は、所得割・均等割・平等割・資産割のいずれかを市区町村ごとに組み合わせて介護保険料を計算します。介護保険料率は各市区町村で異なりますので、詳細の計算方
法は各市区町村へのと問い合わせをお願いします。
・第1号被保険者の場合
介護保険料は市区町村によって異なります。1ヶ月分の保険料は、3年に一度、条例で定める基準額に対して所得段階に応じた割合をかけて算出します。
これまでの介護保険料について、令和5年度では第1号保険者の月額平均は6,014円、第二号保険者の月額平均は6,216円(事業者負担分含む)となっています。
令和6年度の第1号保険者の月額平均は未定となっておりますが、第二号保険者の月額平均は6,276円が見込み額とされています。
※いずれも全国平均です。
介護設備の整備状況や要介護者の人数などは、自治体によってさまざまです。
そのため自治体ごとに納める金額が異なり、また、同じ自治体の中でも所得の違いによって負担に差が生まれてしまいます。そのため個々の負担が大きくなりすぎないように、国の調整交付金が使われています。
調整交付金には、高齢者中の後期高齢者の割合と高齢者の所得状況の格差を調整する「普通調整交付金」と災害時の特別な事情を勘案する「特別調整交付金」があります。
例えば後期高齢者率が低く所得水準の高い市町村の場合、介護サービスの利用が少く所得での支払も可能な方が多いとみなし調整交付金は少なくなります。
反対に、後期高齢者が多く所得水準が低い市町村の場合、介護サービスの利用が多い上に所得で支払が難しい方が多いとみなし調整交付金が多くなります。
介護保険制度とは
これまでの改正について
2000年に介護保険が施行されてから3年に1度内容の見直しが行われています。
令和6年は9期目となり、新しい介護サービスが追加されたり高齢者の負担能力に応じた負担の見直し(第1号保険料負担の見直し)が予定されています。
第1号保険者である65歳以上の介護保険料に関して、2024年度から所得上位層で引き上げる方針です。
給与や配当、年金など年間の合計所得420万円以上の人を対象に階層を細分化して負担額を引き上げるとのことです。
少子高齢化の影響
これまでの介護保険料の推移を見ると、介護保険制度が開始された当時の保険料の約3倍となっています。高齢化社会を背景に、介護サービスの利用者増加が影響していると言えるでしょう。
40歳~64歳(第2号被保険者)の保険料が納付されたのち、2年後に精算をする仕組みとなっています。現在働いている方々が、2年後の高齢者の介護サービスを支えている形です。
要支援・要介護認定者数は増加していますので、一人当たりの負担金額も増えてきているという状況です。
介護保険で受けられるサービス
大きく分けて介護給付を行うサービスと、予防給付を行うサービスの二つに分けられます。
介護給付は要介護認定を、予防給付は要支援認定を受けた人を対象とした給付制度です。
要支援1、2と要介護1~5までの間で認定され、それぞれの月にサービスを利用できる限度額が決まっています。
予防給付を行うサービス(要支援者向け)
・訪問サービス(介護予防訪問入浴介護、介護予防リハビリテーション など)
・通所サービス(介護予防通所リハビリテーション)
・短期入所サービス(介護予防短期入所生活介護 など)
・地域密着型介護予防サービス(介護予防認知症対応型通所介護 など)
・介護予防支援
介護給付を行うサービス(要介護者向け)
・訪問サービス(訪問介護、訪問入浴介護 など)
・通所サービス(通所介護、通所リハビリテーション など)
・短期入所サービス(短期入所生活介護 など)
・施設サービス(介護法人福祉施設、介護老人保健施設 など)
・地域密着介護サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護 など)
・居宅介護支援
令和6年度の介護保険法改定では「複合型サービス」の新設が検討されましたが、現状は見送りとなっています。
これは訪問介護と通所介護を組み合わせたサービスで、地域包括ケアシステムの推進を進めるなかで、必要なサービスが切れ目なく提供できるようになるための取り組みの一つと思われますが、連絡調整が煩雑であることなどが課題とされました。
次回の改定時にも提案・検討のされるサービスとなるかもしれません。
自己負担額
介護保険料の自己負担は、被保険者が介護保険制度を利用する際に支払う一部の負担を指します。具体的な自己負担の金額や条件は、介護保険の制度や対象者の状態によって異なります。
・介護保険料の自己負担額
介護保険に加入する際に月々の保険料を支払います。
この保険料は所得に応じて異なり、所得が高い人ほど保険料の支払いも高くなります。
令和6年度の改正により65歳以上の高齢差であっても所得によって保険料の支払額が変動するように、見直しがされることになりました。
・サービス利用時の自己負担
介護サービスは基本的に1割の自己負担で利用が可能です。
個人や世帯の所得によっては2割もしくは3割の負担となる場合もあります。
具体的な自己負担の割合や上限は介護の程度やサービスの種類によって異なります。
例えば1割の負担でサービスを利用する場合、月2万円の介護サービスであれば自己負担額は2,000円となります。
反対に、所得が低い方、高額医療や高額介護サービスが必要となった方などは、利用負担額が軽減される場合があります。
よくある疑問
介護サービスをうけるための窓口はどこ?
介護保険は地方自治体が主体となり、市町村が具体的なサービスの提供や調整を行います。
まずはお住まいの市区町村の窓口で要介護認定の申請を行います。
申請後、市区町村の職員の訪問を受け認定調査が行われます。
要支援・要介護度の決定後はケアプランが作成され、それにもとづきサービスの利用・提供が始まります。
民間の保険との違い
民間の生命保険会社が扱う保険にも介護保険があります。
生命保険会社が各社の約款で定めている「介護が必要な状態」になったときに、一時金や年金の給付の対象となります。
それぞれの保険会社が「介護が必要な状態」を定めていますので、公的介護保険制度だけでは対応できない経済的負担に備えることが可能です。
民間の介護保険に加入するメリットは、介護にかかる経済的な負担を軽減できることです。
介護保険制度では介護給付もしくは予防給付として「サービス自体」の自己負担が1割~3割に抑えられます。
民間の介護保険に加入していれば、一時金や年金など現金給付としての支援を受けることが可能です。
民間の介護保険について知りたい方は、生命保険や医療保険といった保険に関する情報を発信しているMANEMOの記事を参考にしてみてください。
民間の介護保険はなぜ必要?公的介護保険だけでは何が足りないの?
まとめ
介護保険制度はまだまだ発展途上
2000年に制定された介護保険制度は、3年ごとにサービス内容や利用者負担などの見直しが続けられています。
2024年で9期目となりますが、将来より必要となっていくであろう介護サービスや、第1号保険者と第2号保険者の保険料の負担額の増加など、まだまだ課題も多いように思います。
介護サービスの重要性、必要性が浸透してきている成果とも言えますが、個々人が必要になるであろう介護について考え、介護保険が始まる前から介護保険受給の方法やサービス内容について知っておくことも重要でしょう。
介護業界の今後
介護業界も新しいサービスを増やしニーズに応えようとしています。
今後の情勢も含め、詳しく知りたい方はこちら