介護の仕事といえば、給与が安い、仕事がきついといったイメージがあるでしょう。しかし最近では、国の施策で介護職の給与が上がるというニュースを目にしたことのある人もいるのではないでしょうか?
介護は国家資格として「介護福祉士」も制定されている専門的な仕事です。介護職に就くにあたって、資格を取得することでどのような資格手当や職務手当があるのかを紹介していきましょう。
介護職の資格手当の平均はいくら?
令和4年の調査では常勤介護職の平均給与のうちわけとして、8万円程度の手当があることが分かっています。*1
一見して手当金額が多いように思いますが、この手当の中は職務手当、処遇改善手当の他、通勤手当や時間外手当等も含まれている調査となっています。
各種手当は就業する企業や法人ごとに定められているため、資格手当がある場合もあれば、資格に関係なく介護職員全員に支給される手当もあります。反対に、資格手当が無いという条件の求人もあります。
それでは、代表される資格として「介護福祉士」「介護職員実務者研修」「介護職員初任者研修」に分けて資格手当を比べていきましょう。
*1 厚生労働省 令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要より
介護福祉士
令和3年の公益財団法人社会福祉振興・試験センターの調査によると、介護福祉士の資格手当は平均9,055円/月*2となっています。
資格手当がないという回答も全体の3割程あり、資格手当の金額に大きな差があることがわかります。
資格手当が5,000円~20,000円*3で設定されている求人募集が多いです。中には、30,000円以上支給の求人もあり国家資格である介護福祉士には多くの手当が支払われる場合が多いことが分かります。
*2 R2年度 介護福祉士就労状況調査(別添2)※12ページ
介護職員実務者研修
実務者研修の資格手当は、3,000円~10,000円*3で設定されている求人募集が多いです。
介護職員初任者研修と同じく、研修を受講することで取得のできる資格です。しかし受講内容がより専門的となり、喀痰吸引や経管栄養について学べます。また。取得者はサービス提供責任者など、実務者研修を取得していることで行える職務があるということなどもあってか、初任者研修と比較すると高額の資格手当が設定されている場合があります。
介護職員初任者研修
初任者研修の資格手当は、3,000円~5,000円*3で設定されている求人募集が多いですが、3,000円未満となることも少なくありません。
介護士が一番初めに取得する資格であるため、手当金額を設定していない求人も多いです。
以前は無資格者と初任者研修以上で金額に差がついていることもありましたが、2024年4月より無資格者は介護士としての勤務ができなくなり「認知症介護基礎研修」の受講をしていることが前提となるため、企業や法人によっては有資格者に対する手当の見直しが行われる可能性があるかもしれません。
*3 当社運営のカイゴLINK掲載求人より算出
パート就業の資格手当
資格手当は月ごとに支給される場合がほとんどです。
パート就業の場合は、保有資格や経験によって時給額の設定がされている求人もあります。
資格・経験の加味はされず介護職は一律で同一賃金という場合もあるため、介護の資格を持っていてパート就業を希望する場合は、募集の時給額に開きがあるかを確認するといいでしょう。
介護福祉士に8万円の手当って本当?
資格手当の他にも介護士には特別な手当があることを知っている方も多いと思います。
介護士の給与改善のため、行政から支給されているものです。「介護福祉士を持っていれば8万円の支給がある」と思っている方もいるかもしれません。
現在行政から支給が決まっている手当は以下の3つになりますので、
・介護職員処遇改善加算
・介護職員等特定処遇改善加算
・介護職員等ベースアップ等支援加
介護職員処遇改善による支給
介護職のみを対象とした手当です。
企業・法人ごとの職場環境や、キャリアパスの設定(研修の有無など)によって、加算額が3段階に分けられます。金額は段階ごとに月額1.5万円、2.7万円、3.7万円相当(一人当たり)となります。
この金額の支給方法は企業・法人にゆだねられています。主な支給方法は以下のとおりです。
・月給
・賞与
・一時金
・法定福利費
月給として支給額が決まっている場合、支給額が変動する場合はほとんどありません。
一時金や賞与の場合、処遇改善加算の収入に応じて支給額の調整がしやすいため、年度によって支給額が変わる可能性が充分にあるでしょう。
介護職員等特定処遇改善加算とは
経験・技能のある介護職員やその他職員を対象とした手当です。この加算は介護福祉士の配置等用件を満たしている場合と、そうでない場合によって支給額が異なります。
支給された加算は、下記のような支給方法をするように定められています。
まず支給対象がグループ分けされます。
グループ
・Aグループ……経験・技能のある介護職員(勤続10年以上の介護福祉士相当)
・Bグループ……その他の介護職員
・Cグループ……介護職員以外の職員
賃上げの方法
Aグループのうち1人以上、月額8万円の賃上げ又は440万円以上となるよう支給する。AはBより平均賃上げ額が高く、CはBの2分の1以下の平均賃上げ額となる。
Aグループを設定せず、事業所の全ての職員をBまたはCとして支給する。
BグループとCグループの賃上げは2対1の配分比率となるようにする。
介護職員等特定処遇改善加算の支給方法も企業・法人が設定します。
Aグループのうち1人以上に対して月額8万円以上の賃上げを選択する場合、介護福祉士を保有した介護士の月給に手当として8万円が追加されるように見えるのです。
介護福祉士を保有していたとしても、実務経験に乏しい場合は「経験・技能不足」と判断され、場合によっては特定処遇改善加算の支給対象外となる可能性も充分にあります。
介護福祉士を所有しており手当を多く貰いたいと考えるなら、求人内容をよく確認することが必要です。また面接で自身の経験や能力について説明し、特別処遇改善加算の対象となるのかどうかを確認することも大切です。
資格が無くても手当がもらえる
介護職員処遇改善加算はすべての介護士に支給される手当です。
無資格者(認知症介護基礎研修受講者)でも介護士として、直接介護にかかわっているのであれば手当として給与に含まれることでしょう。
介護職員等特定処遇改善加算も、法人の支給方法によっては資格を持っていない職員にも支給されます。
また、「介護職員処遇改善加算」や「介護職員等特定処遇改善加算」は、国が定める基準を満たしていないと支給されません。そのため、求人にこれらの記載がある場合、職場環境や研修といったキャリアアップの制度が整っていると言えます。介護に関する技術を学べたり、資格取得のためのサポートが手厚い可能性も充分に高いと考えてよいかと思います。
上記に加えて、令和4年10月から「介護職員等ベースアップ等支援加」の措置がされています。
この支給対象も介護職であり資格は問いません。月額9,000円相当の給与アップが見込めます。
介護福祉士でも資格手当がない?
これまで説明をしてきた資格手当や、処遇改善加算についての記載がされていない求人を見かけることはありませんか?
現在就業している法人も、就業規則を確認したら手当に関する記載が無いなんてこともありかもしれません。
そのようなときに確認すべきポイントを説明していきましょう。
求人を確認しよう
まずは気になる求人の月給と各種手当について確認しましょう。
月給の最低金額と最高金額に開きがある場合や、「資格・経験による」などと記載がある場合は、面接後に詳細な条件提示をされる場合がほとんどです。
実際に面接をしてみると、資格手当として決まった金額が設定されているものの求人には記載していないという法人も一定数あります。
資格手当を記載していない法人は、各種資格手当が相場より低かったり、介護福祉士以外の資格手当を設定していないなどの事情がある可能性が充分に高いです。
反対に経験によって基本給のベースがアップしたり、調整手当としてこれまでの経験を鑑みた手当を付けてくれる法人もあります。
まずは応募をし面接で確認をすることが確実ではありますが、応募前に必ず資格手当や処遇改善加算の有無を確認したいという方は、応募の前に法人や求人掲載媒体、エージェントに問い合わせをしてみてもいいかもしれません。
面接や雇用条件通知書で確認
就業する上で給与の確認は大切なことです。
面接で給与面を確認することは恥ずかしいことではありません。しかし質問の仕方には充分に気を付けましょう。
多くの企業では面接時に仕事の内容と一緒に、給与や勤務条件について説明されます。その説明を受け終わったタイミングで質問をすれば問題はありません。
「月給はいくらか」「賞与はいくら支給なのか」といった具体的な金額を聞く方法はNGです。
例えば「お持ちの資格によって手当が支給されます」という説明を受けた場合、「私は介護福祉士を取得しているのですが、資格手当に該当しますでしょうか?」というように質問すると良いでしょう。
その時点で金額の提示がない場合は、内定通知と共に開示があるということになるでしょう。気になる気持ちは一度おさえ、面接での質問は控えたほうがいいでしょう。
また、転職・就活エージェントを介して応募している場合は、エージェントに相談してみるのも良いでしょう。
もっと給与をアップさせるには
職務手当を目指す
介護士として就業する場合、リーダー職、主任職、サービス提供責任者など、一般介護職にプラスして職務を与えられる場合があります。
その場合「職務手当」として手当が支給される場合があります。
直接介護以外に新人教育、研修準備、シフト管理などの業務は増えますが給与も増え、キャリアアップにも繋がります。
ケアマネを目指す
介護福祉士を取得されている場合、ケアマネ(介護支援専門員)の資格取得を目指すことができます。
企業によっては、携わる業務に関わらず、保有資格によって資格手当が支給されます。また介護福祉士より介護支援専門員の資格手当のほうが高額に設定されている場合が多いです。給与のアップを目指したい方は、ケアマネの取得を目指すことも一つの方法でしょう。
転職する
そもそも現在の就業先に資格手当がない、先輩職員が沢山いて一般介護職以外の職務にキャリアアップが難しそう、介護職員処遇改善加算の支給額にばらつきがあるなど、給与アップの見込みができない場合、転職を視野にいれてみてはいかがでしょうか?
カイゴLINKなら資格で求人を絞り込むことができます。
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介護職の資格手当は就業先による
介護職の資格手当は行政として定められているものはありません。
各企業・法人によって設定されている場合もあれば、設定はされておらず基本給によって調整している場合もあるでしょう。
具体的な金額は求人サイトや、面接時に確認し、自分の希望にあった求人に応募をしましょう。
介護職の給与改善という点では、行政から支給されている処遇改善加算があります。
しかしこの加算も企業・法人が要件を満たし、それぞれ行政へ申請している必要があり、今後もそのような手当が設定される可能性は考えられます。
給与に処遇改善が含まれているかどうかは、就業先の判断としてポイントになることでしょう。