介護業界の人材不足についての話題はよく目にすることでしょう。
介護という仕事が普及し始めた頃の「きつい」「きたない」といったイメージが、いまも根強く残っているためなのか、介護職は大変そうと思って就職や転職を避けるということもあるようです。
しかし、介護業界の労働環境は時代とともに改善されてきています。この記事では、介護業界の人材について現状と課題を解説していきます。
- 介護業界の人材不足の背景と現状
- 介護業界の人手不足の原因
- 人手不足の対策をどうするか
- 介護業界に就職や転職を考えている人
- 介護業界の現状を知りたい人
- 介護業界の人手不足の解消方法を知りたい人
介護業界の人手不足の背景
高齢化
昨今、少子高齢化によって介護サービスを受ける高齢者(65歳以上)の割合は増加し続けています。また、医療技術の発展や医療費の安さ、健康意識の高さなどから日本国内の平均寿命も上がり続けています。(*1)
2022年の時点で総人口に対する高齢者の割合は29.1%と3割近くなっており、将来的には2040年に40%近くまで達するとされています。2042年の平均寿命は女性で91.06歳、男性で84.02歳と予測されており、これは男女ともに現在から3歳程度平均寿命が伸びる計算です。(*2)
平均寿命が上がるということは介護サービスを受けている高齢者の平均年齢も上がることを意味し、ひいては要介護度も高くなる可能性があると言えるのではないでしょうか。サービスを利用開始した直後は要支援や要介護1~2程度であった利用者も、利用を継続するうちに介護度が上がっていくことで、サービスを提供する側の負担も増える可能性があります。一方、介護サービスを提供する側でも職員の高齢化は問題になることが考えられます。すでに、ケアマネージャーの高齢化、離職などの現象も見られています。(*3)
参考:*1
図表1-2-1 平均寿命の推移 | 令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-参考:*2
介護労働の現状について 平成29年度介護労働実態調査 | 公益財団法人介護労働安定センター
総人口が減少する中で、高齢者人口は3627万人と過去最多
総人口に占める割合は29.1%と過去最高参考:*3
特にケアマネージャーの離職や高齢化へ対策をとることが課題に | 東京都が介護職を対象に2万円を給付、ケアマネも対象に 2024.01.29
少子化
高齢化が進む一方で、日本の出生率は減少を続けています。少子化が進むということは労働人口の総数が少なくなるということです。何かしらの対策を講じない限り、介護職として働く人数も比例して減少するということになります。少子化に歯止めをかけるため、国は子育て施策を強化していく方針を示していますが価値観や生活習慣の多様化などもあり、すぐに回復することは難しいと言えるでしょう。
職の多様化
企業や法人に就業するという働き方から、フリーランスという働き方を選択する人も増えてきています。様々な働き方を選択できる状況の中で、介護が行う身体介護などは肉体労働と言え、またシフト制の勤務や夜勤が発生するといったイメージから、介護職としての就業を選択するメリットが見えづらいかもしれません。
実際に大学新卒者が就業をする際には、業種、職務内容、給与水準を重要視する割合が多くなっています。またテレワーク制度があれば利用したいという希望も多くみられています。
2018年の調査時点で、兼業・副業も含めると総労働人口の6分の1にあたる数がフリーランスとされています。これには各企業の副業解禁が大きくかかわっています。また昨今では新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークやテレワーク、フレックス制の就業形態が様々な企業で浸透してきています。
このように自身のライフスタイルによって職を選んだり、就業形態を選んだりすることができる中で、福祉・介護関連やインフラ関係の職業は時間の自由が利きづらいと言えるでしょう。
介護業界の人手不足の原因
人手が足りない…は本当?
介護業界は人手が足りないとよく言われますが、他業界と比較した際にも人手が足りない業界なのでしょうか?
2022年の調べでは、情報サービス、警備、建設関係が人手不足の上位を占めており、医療・福祉関連の業界は上位にランクインしていません。
介護サービスの運営には人員配置基準などがしっかりと定められており、その基準を満たさない場合、程度によってサービスの指定取り消しや運営の停止処分となります。
つまり運営ができている時点で、厚生労働省の定めた基準は満たしていることになり、一概に人手不足とはいえません。
しかし、休職者や退職者の増加によって一時的に人手が少ないと感じたり、業務量が膨大で一人ひとりの負担が大きいと感じることもあるでしょう。そのような状況が実際の介護職にとって「人手が足りない」と感じさせる要因になっていると思われます。
身体的負担が大きい
介護サービスの種別にもよりますが、身体介護は必ず発生する業務です。また施設系のサービスや地域密着型サービスでは早番・遅番・夜勤というように、シフト制の勤務となります。休日もシフト制ですので、カレンダー通りの休みを取れる就業先は殆どないと言っていいでしょう。
まとまった休みが取りにくかったり、夜勤の長時間勤務があったりと、身体的負担が大きい仕事とも言えます。
業務による疲れがたまったり、シフト制に身体のリズムがついていかないなどを理由に、離職をする人も少なくありません。
精神的にきつい
介護職が抱える悩みとして「職場のスタッフとうまくいかない」「介護者への声掛けが伝わりにくく介護を拒否される」「他職種との意見が食い違う」といったものがよく聞かれます。コミュニケーション面が円滑に進まないと精神面にも影響します。(*4)
介護は対人サービスのため、イレギュラーが起きることも多いです。イレギュラーに対応するためには、職場のスタッフ同士の連携が取れていないと思うように業務ができず、大変さを感じることでしょう。
公益財団法人介護労働安定センターの調査では、転職の理由として人間関係によるものが最多となっています。
参考:*4
介護労働の現状について 平成29年度介護労働実態調査 | 公益財団法人介護労働安定センター
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7 前職の仕事をやめた理由
【全体】 【前職が介護関係の仕事】
【全体】では「結婚・出産・妊娠・育児のため」が最も多いが、
【前職が介護関係の仕事】では「職場の人間関係に問題があったため」が最も多い
給与が安い
行う業務量や責任に対して給与が安いと感じる人は多いでしょう。
厚生労働省の発表によると介護職の平均年収は379万9,320円(*5)となっており、他職種と比較して高いとは言えません。また夜勤を含むシフト制の勤務を行ったとしても平均400万円前後といわれ、その専門性や業務内容に見合った給与ではないと感じる方もいるでしょう。
この点については、介護職員の処遇改善のため厚生労働省の取り組みも見られています。
介護業界の人手不足で起きる問題
少子高齢化に伴う担い手不足
少子高齢化により労働者の総数が減ると共に、働き方の多様化も相まって、介護職をメインとして就業する選択をする人は少なくなっているのかもしれません。
産業能率大学の調査では、大学生を対象としたアンケート調査にて働くうえで企業に求めるものとして「長期的な安定性」や「福利厚生」「業種」を重要視しているようです。(*6)
また、就業先についての情報収集を職業紹介サイトやYouTubeを参考にしている割合が多いようです。介護についての悪いイメージが完全に払拭されているとは言い難く、そのような点が担い手不足へ繋がっている可能性もあるでしょう。
サービスを受けれる方の基準が厳しくなる
現状のまま介護業界の人手不足が継続すると、希望する介護サービスの提供が難しくなるかもしれません。というのも、高齢者の平均寿命が伸びることで、介護を必要とする方の介護度も高くなることが考えられるからです。介護度が低い高齢者や要支援の認定を受けた方よりも介護度が高い高齢者が優先されるため、人手が充実したサービスが減るという状況が発生するかもしれません。
対策とこれから
ここまで現状の課題を見てきました。それでは今後どのような対策が望まれるのかを見ていきます。
採用側にできること
働きやすい環境を整える
新卒者が就職先に求めることは「長期的に安定して働ける職場」や「福利厚生」であり、転職者は「人間関係」を理由に転職することが多いという統計が出ています。
人間関係が良いことは長期的に安定して働ける職場と言えます。そのためには、職員同士が円滑にコミュニケーションでき、精神的なストレスが和らぐような仕組みを作ることも良いでしょう。
たとえば、人間関係の悩みを相談・解決に導く制度を取り入れたり、業務の効率を上げるよう努力したりといったようなことです。介護職は利用者への介護サービスがメインの業務となります。それ以外の清掃や記録といった業務が介護業務を圧迫していないか見直すことも重要でしょう。
外国人介護人材の受け入れ
介護業界にも外国人介護人材を積極的に受け入れる施設が拡充しています。
看護師や介護福祉士候補の受け入れは、今後も重要になっていくと考えられます。
受け入れ側で体制を整える、既存スタッフへの理解を呼びかけるなど準備を整え、実際に人材の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか。
介護に特化した求人サイトの利用
就職・転職には多くの人が求人情報サイトを利用しています。
介護に特化した求人サイトを利用すれば、人材とのミスマッチを防ぐこともできます。
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まとめ
介護業界において、人手不足は深刻な問題となっています。
少子高齢化がますます深刻化することで、現状が続けば介護職、ひいては介護サービスを提供する側の負担はますます増えていくことでしょう。
行政も介護職に対するイメージアップを行う取り組みや、介護職員の賃金改善について取り組むことが予想されますが、その施策を待っていては現状の人手不足は解消されません。
それぞれの法人にあった取り組みを選択し、早めに対応をしていくことで人手不足を解消していきましょう。