高齢化が進む日本において、高齢者を支援する職業は高い需要があります。高齢者支援ができる職業の一つとして挙げられるのが、機能訓練指導員です。
今回は、機能訓練指導員について、概要や機能訓練指導員になるための資格、仕事内容、向いている人をご紹介します。
- 機能訓練指導員について
- 機能訓練指導員になるために必要な資格について
- 機能訓練指導員に向いている人
- 機能訓練指導員になりたい方、目指している方
- 現在、介護職に就いており新たに資格取得を目指す方
機能訓練指導員の概要
機能訓練指導員とは、具体的にどのような場所でどのような業務を行う職業なのでしょうか。
まずは、機能訓練指導員の概要を確認しましょう。
そもそも機能訓練指導員とは?
そもそも機能訓練指導員とは、利用者一人ひとりの能力に応じ、生活機能の維持及び向上を図る訓練をサポートする人のことを指します。
老化に伴い、さまざまな機能が低下してこれまでできていたことができなくなります。
生活機能を維持したり、向上するための訓練をサポートする職業が「機能訓練指導員」です。
高齢社会となっている今日、高齢者の自立支援や重症化予防が重要視されています。
今後も高齢者が増えていくことが予想されることから、将来性があると言えます。
活躍する場所
機能訓練指導員は、活躍する場所が多数あります。
主な勤務先は、通所介護事業所(デイサービス)・短期入所生活介護(ショートステイ)・特別養護老人ホーム・介護老人保健事業所などです。
この中でも、通所・入所の介護事業所では一人以上の機能訓練指導員の配置が義務付けられています。
高齢者を相手に訓練をサポートするため、主に高齢者が利用する施設が勤務先となります。
デイサービスについては以下の記事も是非チェックしてみて下さい。
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平均給料額
厚生労働省が発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護従事者等の平均基本月給は、常勤者で355,720円、非常勤者で233,310円でした。
働く場所や地域によって若干の変動がありますが、機能訓練指導員になると常勤者で約35万円程度が給与となります。
機能訓練指導員の仕事内容
機能訓練指導員は、単に訓練をサポートするのが業務というわけではありません。訓練以外にも、機能訓練計画書の作成やリハビリメニューの提案、会議への参加なども業務に含まれます。
ここからは、機能訓練指導員の主な仕事内容を詳しくご紹介します。
機能訓練計画書の作成
利用者の訓練を行うにあたり、はじめに機能訓練計画書の作成が必要です。
機能訓練計画書とは、心身の課題や日常の動作問題を改善する計画書のことであり、利用者の現状に基づいてどのような訓練を、どのような目的で行うのかを決めていきます。
訪問介護サービスを提供している施設に従事する場合、3ヶ月に1回以上は利用者宅を訪問します。
この際、機能訓練計画書の評価や計画書の改定をするのも重要な業務の一環です。
リハビリメニューの提案
リハビリのメニューを考えて、提案することもあります。
リハビリメニューは本来、患者本人や看護師と相談しながら医師が作成することが一般的です。
しかし、施設によっては機能訓練指導員がリハビリメニューの提案を担当することもあります。
リハビリメニューの提案についても、利用者の現状から最適なリハビリメニューを組んで、どのような目的で行うのかとともに提案します。
個別リハビリ
リハビリは、個別で行うものと集団で行うものがあります。
個別リハビリは、利用者一人ひとりと向き合うリハビリです。身体機能の維持を目的とする場合がほとんどで、マンツーマンでリハビリを行います。
リハビリの内容は目的や現状によって変わりますが、マシン利用者への介助と指導が主な業務です。
他の介護スタッフがリハビリをサポートすることもありますが、機能計画訓練書の見直しは機能訓練指導員が直接行わなければなりません。
見直しをして、より効果のあるリハビリを提案することは、機能訓練指導員の重要な役割です。
集団リハビリ
個別ではなく、集団でリハビリをすることもあります。集団リハビリは、利用者全体の身体機能強化が目的となる場合が多く、基本的に複数人での体操や筋力トレーニングが行われます。
複数人でリハビリをするため、リハビリによる身体機能の維持や強化だけではなく、施設の仲間と交流しながらリハビリをすることで心身の調子を整える効果も期待できます。
目的に応じて、個別リハビリと集団リハビリを使い分けるとより高い効果が期待できるでしょう。
その他
機能訓練計画書の作成やリハビリメニューの提案、リハビリの実施以外にも、施設によって他の業務を任されることもあります。
例えば、脳や体を使いながら実践できるレクリエーションの提案や担当者会議等への参加などです。
担当者会議とは、要介護者が利用する介護施設の代表者が集まり、利用者の支援方針等について話し合う会議のことであり、定期的に開催されます。
施設の方針によって異なりますが、機能訓練指導員も参加を求められる場合があります。
機能訓練指導員になるための資格
機能訓練指導員として働くためには、養成学校での勉学と国家試験の合格が必須です。機能訓練指導員になるために必要な資格としては、以下が挙げられます。
- 看護師や准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- あん摩マッサージ指圧師
- 柔道整復師
- 鍼灸師
それぞれの資格について詳しくご紹介します。
看護師・准看護師
看護師と准看護師を取得すると、健康上の問題に対して医療の提供や診療の補助をしてサポートすることができます。
点滴や注射といった医療行為を行うこともでき、健康に関する知識を身につけられます。
看護師になるためには、高校卒業者は看護学校で3年以上学び、かつ国家試験に合格する必要があります。
また、中学卒業者は一貫看護師養成学校で5年以上学び、かつ国家試験に合格する必要があります。
心身の健康や医療に関する知識を身につけたい場合は、看護師や准看護師の資格取得を目指すと良いでしょう。
理学療法士
理学療法士とは、基本的な動作能力の回復や維持を目的としたリハビリをサポートする職業です。理学療法士になるためには、養成校で3年以上学び国家試験に合格する必要があります。
身体的な障害によって運動機能が低下した高齢者を相手とすることが多く、現状から最適なリハビリを提案及びサポートし、利用者が自立した生活を送れるように支援します。
身体能力に関する基礎知識を身につけたい場合には、理学療法士の資格取得がおすすめです。
作業療法士
作業療法士とは日常生活に関する作業を通じ、基本的な運動機能や動作能力の改善を図るリハビリを提案、及びサポートする職業です。
対象者に対して直接的な支援を行い、自立した社会生活を送られるよう健康の増進を図る役割を担います。
作業療法士になるためには、養成校で3年以上学び国家試験に合格しなければなりません。
看護師・准看護師のように、学歴によって養成校での学習期間が変わるわけではありませんが、資格取得には数年がかかります。
言語聴覚士
言語聴覚士とは、言語や聴覚に問題を抱える人を対象に、言語機能や聴覚機能の回復、障害の軽減を目的としたリハビリの提案及びサポートをする職業のことです。
基本的に、コミュニケーションや嚥下障害に対する支援を行います。
言語聴覚士になるためには、高校卒業者は養成校で3年以上学び、かつ国家試験に合格する必要があります。
また、一般の4年制大学卒業者は養成校で2年以上学び、かつ国家試験に合格しなければなりません。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師とは、触診を通して症状を確認し、独自の手技を使って治療を行う職業のことです。
触診によって症状が出ている部分を把握して、押す・引く・さするなどの手技を用いて適切な治療を施します。
あん摩マッサージ指圧師になるためには、養成校で3年以上学んだ上で国家試験に合格する必要があります。
あん摩マッサージ指圧師になると、機能訓練指導員としてだけではなく、高齢者以外にも複数の人に対してサポートが可能です。
柔道整復師
柔道整復師は、急性の怪我や痛みに対して手技によって治療を施す職業のことです。独自の手技を用いて、骨や関節・筋などへの痛みや怪我を回復に導きます。
柔道整復師になるためには、高校以上の卒業者の場合は養成校で3年以上学び、かつ国家試験に合格する必要があります。
柔道整復師を取得した上で機能訓練指導員として働く際には、手技や運動療法、物理療法などを組み合わせて、利用者の特性に応じた訓練を行います。
柔道整復師ならではのリハビリテーションができる点が、柔道整復師を取得するメリットと言えるでしょう。
鍼灸師
鍼灸師とは、その名の通り鍼や灸を用いて治療をする職業のことです。東洋医学の伝統的な鍼灸治療により、症状の改善を図ります。
鍼灸師になるためには、養成校で3年以上学んだ上で国家試験に合格する必要があります。また、機能訓練指導員として働くには、資格取得後6カ月以上の実務経験が必要です。
なお、鍼灸師を取得して機能訓練指導員として働く際には、通常のように経穴に鍼を刺したり、灸をあてることはできません。そのため、鍼灸師としての知識を活かした機能訓練を行います。
機能訓練指導員に向いている人
機能訓練指導員の業務において、その業務内容から向いている人と向いていない人がいます。
そこでここからは、機能訓練指導員に向いている人の特徴を4つご紹介します。
リハビリ支援がしたい人
リハビリ支援がしたいとお考えの人は、機能訓練指導員に向いています。なぜなら、機能訓練指導員の仕事は、ケアプランをもとに機能訓練の計画・実行することだからです。
最適な機能訓練を計画して実行するためには利用者の情報を確認したり、様子を聞き取らなければなりません。
これらを行うためには主体的に行動する必要があり、リハビリ支援がしたいと本気で考えている人でなければ務まらないのです。
キャリアを重ねることで、さまざまな状況に柔軟に対応できるスキルも身につけられます。基礎知識とともに、柔軟な対応性も身につけてより良い訓練の提案ができるようになりましょう。
利用者としっかり向き合える人
利用者としっかりと向き合える人も、機能訓練指導員に向いています。なぜなら、機能訓練指導員は利用者の状況に応じて機能訓練を行わなければならないからです。
利用者それぞれで、状況が異なります。何ができて何ができない、またはしにくいのか、訓練にどのような目的を持って望んでいるのかなど、利用者としっかりと向き合ってよりそうことが大切です。
利用者一人ひとりを尊重できる人でなければ、機能訓練指導員を続けることは難しいでしょう。
コミュニケーション能力の高い人
コミュニケーション能力の高さも、機能訓練指導員には重要です。なぜなら、機能訓練指導員は利用者だけではなく、他業種とも関わりがある職業だからです。
利用者の状況を把握し、寄り添うためにはコミュニケーション能力が欠かせません。加えて、複数の業種の人とも関わりを持つ必要があり、円滑な連携のためにはコミュニケーション能力が求められます。
機能訓練指導員には、専門知識やスキルだけではなく多くの人と関わり合えるコミュニケーション能力も必要です。
仕事にやりがいを感じられる人
仕事にやりがいを感じられる人も、機能訓練指導員に向いています。
機能訓練指導員になると、大変なことも多々あるでしょう。
しかし、大変なことばかりではなく、利用者の身体機能が改善される様子を直接見られたり、利用者や家族から感謝を伝えられるなど、やりがいを感じられる場面も多くあります。
仕事にやりがいを感じられれば、モチベーションの維持・向上につながるでしょう。
まとめ
利用者のさまざまな機能の維持及び向上を図る訓練を提案、サポートする機能訓練指導員。機能訓練指導員になるにあたって役立つ資格が多数ありますが、それぞれで専門性や特徴が異なります。
どのような訓練指導をしたいのかを明確にし、最適な資格を取得して機能訓練指導員として活躍しましょう。
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