2024年から、認知症介護基礎研修の実施が義務化されます。
認知症介護基礎研修について、介護業界で働く無資格者や介護施設側は正しく把握しておかなければなりません。
そこで今回は、認知症介護基礎研修とは何かや受けないとどのようになるのかについて、研修が免除となる条件や受講方法とともにご紹介します。
参考:
認知症介護基礎研修、実践研修等のあり方 およびその育成に関する調査研究事業 報告書
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の概要|厚生労働省
認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~|厚生労働省
- 2024年より義務化された「認知症介護基礎研修」について
- そのメリットや「介護職員初任者研修」との違い
- 研修後のキャリアアップに関して
- これから介護業界への転職を検討中の方
- 未経験で開業会に興味がある方
- 介護業界を離れており、復帰を予定している方
認知症介護基礎研修の基礎知識
認知症介護基礎研修は、2024年から義務化された研修です。
義務化されることは、介護施設運営者も介護業界で働く人も知っておく必要のある研修といえます。
そこで最初に、認知症介護基礎研修の概要について解説します。
認知症介護基礎研修とは
認知症介護基礎研修とは 認知症の方々を支援する知識と技術を身につけるための研修のことです。
認知症ケアは一人で行うものではなく、チームを組み複数人で行います。
そのため、単に基礎知識や知識・技術を実践するための考え方を身につけるだけではありません。
チームアプローチに参画する一員としての自覚を持ち、チームで基礎的なサービス提供を実施するための研修でもあります。
これまで、認知症介護基礎研修の受講は任意でした。
しかし、2024年4月から受講が完全義務化されたため、認知症ケアに携わる無資格者は必ず研修を受講しなければなりません。
認知症介護基礎研修で学ぶこと
認知症介護基礎研修では、主に認知症の基礎知識と認知症の人への対応の仕方を学びます。
そもそも認知症介護基礎研修は、「認知症介護実践者等養成事業」の一種であり、介護初任者への実施を目的とした入門的な研修です。
そのため、認知症とは何かやどのように接するのか、認知症を取り巻く現状など、基礎知識を学ぶことができるのが認知症介護基礎研修です。
義務化された背景
認知症介護基礎研修は、これまで任意での実施でした。
しかし、2024年4月から無資格者への実施が義務化されました。
義務化された背景には、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるとの推計が関係しています。
今後も認知症の方の増加が見込まれており、介護に携わる人の認知症ケアの基礎知識が必要不可欠と判断されたのです。
認知症介護基礎研修が義務化される以前は、無資格者や介護職員初任者を対象とした認知症ケアに関する研修はありませんでした。
そのため、認知症介護基礎研修を義務化することで認知症ケアに関する知識や考え方を身につける機会を確保したのです。
このように、今後も認知症の方が増える見込みであることや、無資格者が認知症ケアについて適切な対応知識や考え方を得る機会を確保するために、認知症介護基礎研修が義務化されました。
受講対象者
認知症介護基礎研修の受講対象は、医療や福祉関係の資格を有さない無資格で介護をする全職員です。
認知症サポーター等養成講座や認知症ケア指導管理士など、民間資格保有者は含まれません。
また、施設の規模やサービスの種類は要件に含まれず、介護保険施設や事業所などで働く認知症介護に携わる介護職員のうち、すべての無資格者が対象です。
研修の免除条件:資格保有者
医療・福祉関連の資格保有者は受講が免除されます。
具体的には、以下の資格保有者は研修免除対象です。
- 医師
- 歯科医師
- 歯科衛生士
- 薬剤師
- 看護師
- 准看護師
- 介護福祉士
- 介護支援専門員
- 実務者研修修了者
- 介護職員初任者研修修了者
- 生活援助従事者研修修了者
- 介護職員基礎研修課程修了者
- 訪問介護員養成研修一級課程または二級課程修了者
- 社会福祉士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 精神保健福祉士
- 管理栄養士
- 栄養士
- あん摩マッサージ師
- はり師きゅう師
など。
関連リンク
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研修の免除条件:一定の研修終了者
資格保有者以外にも、一定の研修を修了している方も受講が免除されます。
例えば、認知症介護実践者研修や認知症介護実践リーダー研修などの研修を受講済みの方は、無資格者であっても認知症介護基礎研修の受講が必須ではありません。
その他直接介護に関わらない方、従業員ではない方も研修の免除に該当します。
研修を受けないとどうなる?
免除の要件に該当しない無資格者が認知症介護基礎研修を受講していない場合、介護サービスを提供する事業所で働けません。
また、対象者に研修を受けさせない事業所は、行政指導や処分の対象になる可能性があります。
このようなことから、介護サービスを提供する事業所で働きたい無資格者は研修が必要であり、事業所側は該当する職員が在籍している場合は研修を実施しなければならないのです。
介護職員初任者研修との違い
認知症介護基礎研修と混同されがちな研修として、介護職員初任者研修があります。
では、認知症介護基礎研修と介護職員初任者研修にはどのような違いがあるのでしょうか。
ここからは、介護職員初任者研修との違いをご紹介します。
研修目的の違い
認知症介護基礎研修と介護職員初任者研修は、研修目的に違いがあります。
認知症介護基礎研修は、認知症の方々を適切にサポートするための基礎知識や考え方を身につけることを目的とした研修です。
一方で介護職員初任者研修は、介護の基本知識や技術を学ぶことを目的とした研修です。
つまり、認知症介護基礎研修は認知症の方々をサポートするための研修であることに対し、介護職員初任者研修は認知症だけではなく介護全般の知識や技術を学ぶ研修である点に違いがあります。
研修科目の違い
認知症介護基礎研修の研修科目は認知症の定義や認知症ケアの基礎技術です。
一方で介護職員初任者研修の研修科目は、職務・老化・認知症・障害の理解・介護の基本です。
このように、認知症を専門とした研修であるか、介護全般の研修であるかという違いがあります。
取得する期間の違い
認知症介護基礎研修は1日で習得できます。
一方で介護職員初任者研修の習得には、約130時間かかります。
介護職員初任者研修は介護全般を学ぶ研修であり、認知症介護基礎研修に比べて研修科目も多いため、その分習得に時間がかかるのです。
また、かかる費用の目安も研修時間と同様に差があります。
介護職員初任者研修は研修を受けるスクールによって、認知症介護基礎研修は地域によってそれぞれ費用が異なりますが、介護職員初任者研修は5~10万円、認知症介護基礎研修は3,000円程度です。
免除条件の違い
前述の通り、認知症介護基礎研修には免除条件が設けられています。
同様に介護職員初任者研修にも免除条件が設けられています。
しかし、認知症介護基礎研修と介護職員初任者研修の免除条件は別です。
認知症介護基礎研修の免除条件は資格保有者、または一定の研修終了者です。
介護職員初任者研修の免除条件は、保健師・看護師・准看護師いずれかの資格保持者で訪問介護事業所に従事が内定している場合です。
介護福祉士初任者研修に関する記事はこちら!
認知症介護基礎研修のメリット
認知症介護基礎研修を受講することには、以下の3つのメリットがあります。
- 介護サービスの仕事ができる
- 認知症の知識が身につく
- キャリアアップが狙える
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
介護サービスの仕事ができる
認知症介護基礎研修を受講することで、介護サービスの仕事ができます。
認知症介護基礎研修が2024年4月から義務化されたことで、無資格者は研修を受講していないと介護サービスで働けません。
つまり、無資格者が介護サービスの仕事をするためには認知症介護基礎研修の受講が必要不可欠なのです。
また、単に介護サービスの仕事ができるだけではなく、研修を受けることで根拠に基づいた認知症ケアが実践できます。
認知症についての知識が深まり、介護サービスを提供する現場で役立つさまざまな知識や考え方が身につけられます。
認知症の知識が身につく
認知症介護基礎研修は、認知症の基礎知識や認知症の方への適切な接し方、チームワーク、考え方などを学べます。認知症に特化しているからこそ、知識を身につけやすいのです。
適切な知識を持っておくことで、現場で働く際にトラブルを回避できたり、介護者の負担が軽減されたり、利用者が安心感を得られるなどのメリットにもつながります。
キャリアアップが狙える
認知症ケアに関する資格には、認知症介護基礎研修の上位資格である認知症介護実践者研修をはじめとしたさまざまな資格があります。
キャリアアップを目指したい場合は、認知症介護基礎研修で基礎的な知識を身につけた上で、上位資格の取得を目指すとよいでしょう。
また、資格手当が設定されている事業所であれば、給与アップも狙えます。
認知症介護基礎研修のデメリット
研修の受講には費用や時間がかかります。多忙で時間を確保できず、研修を受けるタイミングが作れないという事態にもなりかねません。
受講費用は、自治体や受講方法に応じて変わります。
事前に対象の自治体に確認しておくとよいでしょう。
また、研修が義務化されたことで、資格なしでも働けていた頃に比べると介護職に就くハードルが高くなったともいえます。
認知症介護基礎研修の受講について
ここまで、認知症介護基礎研修の概要やメリットとデメリットをご紹介してきました。
ここからは、認知症介護基礎研修の受講について、受講方法や費用、カリキュラムなどを具体的にご紹介します。
受講方法と申込手続き
認知症介護基礎研修の受講方法は、eラーニングと集合型研修の2種類があります。
インターネット環境が整っていない場合は集合型研修を受講しましょう。
eラーニングで受講する際の基本的な受講方法は以下の通りです。
- 認知症介護基礎研修eラーニング受講サイトにアクセスする
- 受講者登録をしてユーザーIDを発行する
- 受講料を支払う
- 受講開始
集合型研修の基本的な受講方法は以下の通りです。
- 各自治体のサイトから研修実施機関を確認する
- 研修実施機関のサイトから受講申し込みをする
- 受講料を支払う
- 受講開始
なお、自治体ごとに申込手順が若干違います。事前に各自治体の申込方法を確認しておきましょう。
研修に必要な費用
研修にかかる費用は自治体ごとに違いますが、概ね3,000円前後です。
申し込み前に各自治体の費用を確認しておきましょう。
一例として、大阪の受講料は税込3,000円です。
出典)認知症介護基礎研修(大阪府)https://www.pref.osaka.lg.jp/o090090/kaigoshien/ninnshishou-gyakutai/kiso.html
カリキュラム
集合型研修の場合は講義と演習です。講義と演習を合わせて6時間程度の研修が行われます。
eラーニングの場合は、約150分の動画視聴と、それぞれの章に対する確認テストの解答です。
また、修了試験などはなく、取得の難易度は低めといえます。
認知症介護基礎研修の取得後のステップ
認知症介護基礎研修の受講後にキャリアアップを目指したい場合は、認知症介護基礎研修の上位資格の修得を目指します。
認知症介護基礎研修の上位資格は「認知症介護実践者研修」「認知症介護実践リーダー研修」「認知症介護指導者養成研修」の3ステップです。
最後に、それぞれのステップについてご紹介します。
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修とは、認知症ケアに関する理念の理解と実践的な知識、スキルを修得するための研修であり、認知症ケアのエキスパートを目指す研修です。
認知症の基礎知識やスキルに加えて、認知症の方への具体的なケアとアセスメントを身につけられます。
受講条件は自治体ごとに違いますが、2年以上の実務経験を求められることがあるため、事前の確認が必須です。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修とは、介護施設や事業所におけるケアチームのリーダーを育成する研修です。
認知症ケアの基礎知識や専門知識に加え、認知症ケアにおけるチームマネジメントや認知症ケアの指導方法について学びます。
受講条件は自治体ごとに違い、認知症介護実践者研修の修了後1年以上、かつ5年以上の認知症ケアの実務経験を条件としている自治体があります。
認知症介護指導者養成研修
認知症介護指導者養成研修とは、研修の企画立案や介護の質の改善についての指導者を養成する研修のことです。
受講条件は自治体に応じて違いますが、一例として認知症介護実践リーダー研修を受講している、または介護福祉士の資格保有などの条件が設けられています。
また、研修の受講には勤務する事業所からの推薦が必要です。
まとめ
2024年から、認知症介護基礎研修の実施が義務化されました。
無資格の方が介護施設や事業所にて認知症の方をサポートするためには、認知症介護基礎研修の受講が必須です。
認知症介護基礎研修を受講することで、認知症についての基礎知識や適切な接し方を学べたり、キャリアアップが狙えたりなど多くのメリットがあります。
受講方法や受講費用は自治体ごとに違います。認知症介護基礎研修を受講する場合は、事前に各自治体に確認が大切です。
認知症介護基礎研修を受講して、より質の高い介護サービスを提供を目指しましょう。
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