介護福祉士として現場の最前線で働いている方の中には、不規則な生活や体力を使う仕事に限界を感じている方もいるのではないでしょうか。
とはいえ、せっかく取得した介護福祉士の資格や、今まで現場での仕事で培ってきた能力を手放すのはもったいない気がしてしまいますよね。
この記事では、介護福祉士の資格でできる現場以外の仕事や、介護福祉士におすすめの他業種の仕事を紹介しています。
介護福祉士の経験を活かせる仕事はたくさんあります。ぜひ自分に合った仕事を見つけてください。
この記事でわかること
- 介護福祉士の資格を活かした現場以外の仕事
- 介護士の強みを活かした他業種の仕事
こんな人におすすめの記事です
- 介護福祉士の資格を活かした現場以外の仕事を探している方
- 他業種へ転職したい方
介護福祉士の資格でできる現場以外の仕事5選
介護福祉士の資格を活かせる現場以外の仕事には、以下の5種類があります。
- ケアマネージャー(介護支援専門員)
- 介護福祉士養成施設の教員
- 福祉系の高校の教員
- 初任者・実務者研修の講師
- 福祉用具販売員
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
ケアマネージャー(介護支援専門員)
ケアマネージャーは、要介護度認定を受けた方が、適切な介護サービスを受けられるように「ケアプラン(介護サービス計画書)」を作成する仕事です。
介護支援専門員とも呼ばれます。
利用者は、ケアマネージャーが作成したケアプランをもとに、介護サービスを受けます。
自身が作成したケアプランで、利用者やご家族に変化がみられたときには大きなやりがいを感じるでしょう。
ケアマネージャーは都道府県が管轄する公的資格で、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格することで取得できます。
この試験を受けるには、「介護福祉士として現場での経験を5年以上積む」といったいくつかの受験資格を満たす必要があります。
さらに、介護福祉系の中でもっとも難易度の高い資格でもあるため、簡単に取得はできませんが、キャリアアップにもなるためおすすめです。
介護福祉士養成施設の教員
介護福祉士養成施設とは、介護福祉士を育てるための学校を指します。
厚生労働省が公表している「介護福祉士養成施設一覧」によると、大学や短大、専門学校など、全国に約490の養成施設があります。
介護福祉士養成施設の教員になるためには、「社会福祉士養成施設規定」に定められている
以下のいずれかを満たさなければなりません。
- 介護福祉士、医師、保健師、助産師、看護師又は社会福祉士の資格を取得した後、5年以上の実務経験を有する者
- 大学院、大学、短期大学又は高等専門学校において、教授、准教授、助教授又は講師として、その担当する教育に関し教授する資格を有する者
- 専修学校の専門課程の教員として、その担当する教育に関し3年以上の経験を有する者
介護福祉士養成施設の教員になるためには、ほかにも、専任教員課程等を修了するなどの細かな規定があります。
そのため、介護福祉士として5年以上の実務経験を積むだけでは教員になれるわけではありませんが、介護福祉士の資格があれば目指すことが可能です。
福祉系の高校の教員
福祉系の高校とは、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した、介護福祉士養成教育を実施している高等学校を指します。
文部科学省では、介護福祉士から福祉系の高校の教員を目指せる「介護福祉基礎等の科目の教員」の要因として、以下を提示しています。
介護福祉基礎、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程、介護総合演習又は介護実習を教授する教員のうち1人は、(1)介護福祉士の資格を有する者であって資格の取得後5年以上の実務経験を有する者、又は、(2)介護福祉士の資格を有する者であって文部科学大臣及び厚生労働大臣が別に定める基準を満たす研修を修了したものその他これらに準ずるものとして文部科学大臣が別に定める者を置くこととする。
福祉系の高校の教員と、介護福祉士養成施設の教員は、介護福祉士を目指す方を教育するという点で共通しているため、教員になるまでの要件もほぼ同じです。
初任者・実務者研修の講師
初任者研修とは、介護職として働くうえで基本となる知識・技術を修得するための研修で、実務者研修とは、初任者研修からランクアップした内容の研修のことです。
どちらも、介護福祉士として5年以上の実務経験を積むことで、講師になることが可能です。
しかし、初任者研修の場合には、各都道府県が定めた「講師要件」を満たさなければなりません。
また、実務者研修の「介護課程3」と「医療的ケア」の講師になる場合には、5年以上の実務経験のほかに、以下の条件が追加されます。
科目 | 条件 |
---|---|
介護課程3 | 専任教員の資格要件を満たしている |
実務者研修教員講習会、実習指導者講習会を修了している | |
医療的ケア | 実務経験5年以上の看護師(医師、保健師、助産師又は看護師) |
医療的ケア教員講習会を修了している |
介護福祉士で現場以外のキャリアアップ6選
介護福祉士が現場以外の仕事でより高い報酬や待遇を目指してキャリアアップを検討する場合、以下のような選択肢があります。
施設長・管理者
現場で働く以外の選択肢として、施設長や管理者になる選択肢があります。
誰でも施設長や管理者になれるわけではありませんが、豊富な実績と経験があれば就ける可能性がある仕事です。
施設ごとに要件が異なるため、働きたいと感じる施設や現在の職場の要件を確認しましょう。
なお、施設長や管理者としての働く場所は、特別養護老人ホーム・グループホームや小規模多機能型居宅介護・介護老人保健施設などが候補です。
サービス提供責任者
サービス提供責任者とは、介護サービスを行う施設をまとめる責任者です。
細かな業務内容は施設ごとに違いますが、主な業務内容は在籍するホームヘルパーの手配やスケジュール管理、訪問介護の計画書の作成、利用者のご家族の相談相手などです。
サービス提供責任者は、旧ホームヘルパー1級を有する人・介護福祉士や看護師、准看護師などの国家資格を有する人・実務者研修の修了者などが目指せます。
介護支援専門員
「ケアマネージャー」とも呼ばれており、介護を受ける人やその家族と、介護サービスを提供する事業者や自治体の仲介を担う仕事です。
主な業務内容は、要介護者の状態からケアプランを作成して、必要な介護サービスが受けられるように支援をします。
介護福祉士から介護支援専門員になりたい場合は、資格取得後に実務経験5年以上かつ900日以上の経験が必要です。
加えて、介護支援専門員実務研修受講試験への合格が条件です。
理学療法士
おとろえた身体機能向上のために、温熱療法や電気療法でリハビリを提供する仕事です。
理学療法士は国家資格です。そのため、理学療法士として働くためには、国で指定の大学や短大・養成施設にて3年以上学び、国家試験の合格が求められます。
作業療法士
心身に障害がある人の機能向上を目的に、日常生活をスムーズに行えるようにリハビリを提供する仕事です。
作業療法士も国家資格であり、理学療法士と同様に国指定の大学や短大、養成施設にて3年以上学び、かつ試験に合格することで勤務できます。
福祉用具販売員
福祉用具販売員の中には、利用者に適した福祉用具を選んだり、使用方法について利用者やご家族に説明する「福祉用具専門相談員」がいます。
福祉用具専門相談員は、介護保険制度の指定を受けた福祉用具販売店に、必ず2名以上の配置が義務付けられています。
福祉用具専門相談員になるためには、福祉用具専門相談員指定講習を受講後、修了試験に合格しなければなりません。
しかし、介護福祉士の資格を有していれば、講習を受講しなくても福祉用具専門相談員として勤務が可能です。
介護福祉士の転職におすすめな他業種の仕事7選
介護福祉士の転職におすすめな他業種の仕事には、以下の6種類があります。
- ソーシャルワーカー(生活相談員)
- 社会福祉士
- 介護タクシーのドライバー
- 保育士
- 介護事業所の事務職
- 営業職
- 看護師
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
ソーシャルワーカー(生活相談員)
ソーシャルワーカーとは、ケアマネージャーや社会福祉士、生活相談員など、相談支援の役割がある職種のことを指します。
ここでは、ソーシャルワーカーの中の「生活相談員」について説明していきます。
生活相談員とは、利用者の相談に対して、福祉や介護など多方面と連携を取りながら、問題を解決していく仕事です。
生活相談員は、利用者や家族とのコミュニケーションはもちろん、事務仕事も行わなければなりません。
そのため、介護福祉士として培ってきた知識やコミュニケーション能力が役に立つ仕事です。
社会福祉士
社会福祉士は、「ソーシャルワーカー」とも呼ばれています。
心身に問題のある人や高齢者、ひとり親、生活困窮者の抱える悩みを聞き、適切なサービスが提供できるように支援する仕事です。
社会福祉士は国家資格であり、国家試験に合格して資格を取得することで就ける仕事です。
介護タクシーのドライバー
介護タクシーとは、要介護1以上の方が1人で外出する際、公共交通機関の利用が難しい場合に利用できるタクシーです。
介護タクシーのドライバーは、運転以外にも乗降時の介助が仕事に含まれます。
介護タクシーのドライバーになるには、普通運転免許のほかに、介護職員初任者研修の取得が義務となっています。
つまり、介護福祉士を取得していれば介護タクシーのドライバーになることが可能です。
似た職種として「福祉タクシー」がありますが、こちらは福祉車両のドライバーのため、乗降時の介助は必要なく、介護職員初任者研修の取得も必要ありません。
保育士
介護福祉士と保育士は、あまり接点がないように感じる方も多いでしょう。
しかし、介護福祉士として現場で得たことは、保育士の仕事で活かされる場合が多く、介護の現場から保育士へ転勤する方も少なくありません。
たとえば、介護福祉士として現場で培った臨機応変に対応していく能力や観察力は、保育の現場でも大いに役立ちます。
保育士になるためには、年に2回実施されている「保育国家試験」に合格する必要がありますが、介護福祉士の場合には試験の一部が免除となります。
介護事業所の事務職
介護事業所の事務職の主な仕事は、介護報酬の請求事務や書類の作成、電話対応などのデスクワークです。
そのため、介護の現場で働いていくことに体力の限界を感じ転職したい方に非常におすすめです。
事務職であれば夜勤もないため、不規則な生活を改めたい方にも良いでしょう。
介護事業所の事務職は、現場で働いていた際の知識や経験を活かせるだけではなく、現在現場で働いている職員を陰ながら支えることもできる職種です。
営業職
営業職とは、商品やサービスを紹介し、購入や契約につなげる仕事です。
介護福祉士と営業職は、一見つながりがないように感じる方も多いかもしれません。
しかし、営業職の仕事では、現場で培った接遇やコミュニケーション能力を活かすことができます。現場で身につけた体力も役に立つでしょう。
ただし、介護福祉士から一般企業である営業職への転職は、ハードルが高いのも事実です。
面接の際には、自身の強みをしっかりアピールできるよう、準備しておきましょう。
また、介護福祉士から営業職に転職する場合には、介護用品を取り扱う企業などを選ぶようにすると、比較的優遇されやすいです。
看護師
スキルアップが目的で、看護師を目指す介護福祉士は多くいます。
看護師と聞くと、点滴などの医療的ケアをイメージされ、介護福祉士の経験を活かせないのではないかと悩む方もいるでしょう。
しかし、看護師の業務は医療的ケアだけではありません。看護師も、現場の介護職と同様に、整容や移乗の介助などを行います。
介護福祉士としての経験を活かしながら、さらに医療的ケアもできるようになる看護師への転職もおすすめです。
また、今後、介護福祉士から看護師を目指す場合に一部カリキュラムが免除になる「共通基礎課程制度」が導入される見込みです。
共通基礎課程制度が導入されれば、さらに、看護師を目指しやすくなるでしょう。
介護福祉士と資格について
ここからは介護福祉士として取れる資格や、介護福祉士を続けるにあたって取ると有利な資格について解説します。
資格は介護福祉士を続ける場合でも、現場以外の仕事に転職する場合にも役立ちます。今後のキャリアを考え、取るべき資格について把握しておきましょう。
介護福祉士の資格で取得できる資格
介護福祉士の資格を持っていると取得できる資格はいくつかあります。
例えば、介護福祉士の上位資格である認定介護福祉士は、認定介護福祉士養成研修Ⅰ類と認定介護福祉士養成研修Ⅱ類を受講することで取得可能です。
受講の要件には、介護福祉士として5年以上の実務経験や、介護職員を対象とした現任研修等の受講歴が100時間以上であること、レポート課題の提出などがあります。
介護福祉士の資格を取得して2年未満の場合は、介護福祉士基本研修の取得がおすすめです。受講することで、介護福祉士の役割をより理解し、介護職としての視野や視点を広げられます。
その他にも、介護福祉士ファーストステップ研修や介護支援専門員も取得できるため、今後のキャリアによっては取得を目指しましょう。
介護福祉士が持っていると有利な資格
介護福祉士を持っていて転職に役立つ資格としては、喀痰吸引等研修や認知症介護実践者研修などが挙げられます。
これらの資格も持っていると、業務の幅が広がるため転職時に有利です。
介護業界内で転職を検討する場合には、資格取得を目指すとよいでしょう。
更なるキャリアアップを目指すための資格
介護福祉士としてキャリアアップを目指したい場合には、以下の資格の取得がおすすめです。
- 喀痰吸引等研修
- サービス提供者研修
- レクリエーション介護士
- 介護予防運動指導員
- 認知症介護基礎研修
- 認知症介護実践者研修
- 社会福祉主事任用資格
- ガイドヘルパー
関連資格との連携とそのメリット
関連資格を取得することで、昇給を目指せたりより幅広い業務が可能になります。
とはいえ、それぞれの資格ごとに要件が異なるため、まずは受験資格や要件が該当するかを確認しましょう。
また、給料アップを目指して転職をする場合には、資格手当の有無も職場を探す際のポイントです。
介護福祉士が働ける場所と職種
介護福祉士が働ける場所は、介護を必要とする人がいる場所です。
例えば、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、デイサービス、障がい者施設、病院などが一般的です。
介護福祉士の資格を持っていると、生活相談員や介護講師、福祉用具専門相談員などとしても活躍できます。
生活相談員は、介護を必要とする人やその家族の相談役になったり、介護施設にてサービスの契約手続きをしたりする仕事です。施設やケアマネージャーと、介護を必要とする人やその家族の仲介となり、連絡や調整をします。
介護講師とは、介護関連の学科を教える教員や講師のことです。介護講師になるためには、いくつかの定められた要件を満たす必要があり、概ね介護福祉士としての実務経験が5年以上あれば可能です。
また介護福祉士のまま、働く場所を変えることで今とは違う仕事につく方法もあります。
病院での介護福祉士の役割と業務
病院における介護福祉士の主な業務は、介護を必要とする患者の食事や着替えなど、身の回りのサポートです。
病院にいる人全てに介護が必要なわけではないため、介護を必要とする患者にのみ対応します。
寝たきりの人に対しては、体位交換や付き添いなどの仕事を任せられることもあります。
デイサービスでの介護福祉士の役割と業務
デイサービスでは、食事や入浴、リハビリやレクリエーションなどが介護福祉士の仕事です。
自宅で生活する人が対象であり、日帰りでサービスを提供します。
在宅の高齢者は孤立しがちであるため、よりきめ細かなサービスの提供が求められます。
介護福祉士の強みを活かして転職しよう
介護福祉士の資格や、介護福祉士として培ってきた能力は、介護の現場以外でも活かせる場所が多くあります。
また、一見介護とはまったく関係がないような仕事であっても、介護福祉士としての経験は決して無駄にはなりません。
現場での仕事に限界を感じている方はもちろん、現場以外で介護福祉士としての能力を活かしたい方も、この機会に転職を考えてみてはいかがでしょうか。
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