介護福祉士の上位資格として、認定介護福祉士があります。
国家資格である、介護福祉士については知名度が高く、資格取得に向けて勉強をしている方も多いでしょう。
しかし、認定介護福祉士は比較的新しい資格のため、「どのような資格なのか詳しく知らない」という方も多いと思います。
そこでこの記事では、認定介護福祉士資格について、概要や取得するメリット、取得条件について詳しく解説します。
この記事でわかること
- 認定介護福祉士とはどのような仕事か
- 認定介護福祉士を取得するメリット
- 認定介護福祉士の取得方法
こんな人におすすめです
- 認定介護福祉士について詳しく知りたい方
- 認定介護福祉士の取得方法を知りたい方
認定介護福祉士とは?
認定介護福祉士とは、介護福祉士の上位資格として位置づけられている民間資格で、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が2015年12月に開始しました。
認定介護福祉士資格の狙いとしては、以下の3つが挙げられます。
- 介護福祉士の資質を高め、社会のニーズに応える
- 介護福祉士の社会的な評価を高める
- 介護福祉士資格取得後のキャリアパスを整備する
これまで介護福祉士を取得した後のキャリア形成として明確なものはありませんでしたが、認定介護福祉士資格ができたことで、ベテラン介護職員の活躍の場が広がることに期待されています。
そうした側面から、まだ歴史は浅いものの、徐々に有資格者は増えています。
認定介護福祉士と介護福祉士・ケアマネジャーの違い
介護に関する資格として、介護福祉士とケアマネージャーが有名ですが、認定介護福祉士との違いを解説します。
介護福祉士との違い
認定介護福祉士と介護福祉士の違いは、以下の通りです。
介護福祉士 | 認定介護福祉士 | |||
---|---|---|---|---|
資格 | 国家資格 | 民間資格 | ||
仕事内容 | 介護現場の業務 |
現場の統括 現場以外との連携 |
||
実務経験年数 | 3年以上(※) | 介護福祉士取得後5年以上 |
※養成施設・福祉系高校ルートを除く
まず、介護福祉士は国家資格なのに対して、認定介護福祉士は民間資格だということが大きな違いの1つです。
認定介護福祉士は、養成研修を修了後に認定されれば資格取得ができます。
仕事内容・役割として、介護福祉士は、利用者様の身体上のケアや精神面でのケア等の介護業務のプロとして、現場中心の業務が主となります。
対して認定介護福祉士は、リーダーの教育やマネジメント等、より幅広い業務に従事し、介護業務の時間は少なくなる可能性があります。
また資格取得に必要な実務経験年数について、介護福祉士は「介護業務に従事した期間が3年以上」というのが一般的ですが、認定介護福祉士は「介護福祉士取得後の実務経験年数が5年以上」となっています。
つまり、未経験から認定介護福祉士になるには、実務経験が最低でも8年(養成施設・福祉系高校卒は5年)必要になります。
介護福祉士に関して詳しくは以下の記事で解説しています。
ケアマネージャーとの違い
認定介護福祉士とケアマネージャーの違いは、以下の通りです。
ケアマネージャー | 認定介護福祉士 | |||
---|---|---|---|---|
資格 | 都道府県が認定する資格 | 民間資格 | ||
仕事内容 | ケアプランの作成 |
現場の統括 現場以外との連携 |
||
実務経験年数 | 指定業務を5年以上 | 介護福祉士取得後5年以上 |
まず、ケアマネージャーは都道府県が認定する資格で、認定介護福祉士は民間資格となります。
ケアマネージャー取得には、介護支援専門員実務研修受講試験に合格すること・介護支援専門員実務研修の修了・実務経験5年以上が必要となります。
業務内容の違いとして、ケアマネージャーはケアプランの作成が主な仕事となります。
認定介護福祉士の業務はリーダーの教育やマネジメント、他職種との連携が主となるため、大きく異なることがわかります。
ケアマネージャーは利用者様以外に家族とのかかわりも重要となる仕事なので、その点も大きな違いといえるでしょう。
また、資格取得可能な実務経験について、ケアマネージャーは以下が一般的な条件となります。
- 介護福祉士や社会福祉士、看護師等の保健・医療・福祉系の資格を持ち、さらに資格に基づいて従事した期間が5年以上
- 生活相談員や支援相談員として相談事業に5年以上従事
認定介護福祉士の役割と仕事内容
認定介護福祉士の役割と仕事内容は以下の3つです。
- 現場でのマネジメントや育成
- 他職種との連携
- 地域の介護力の向上
介護人材育成のための教育指導に取り組むことや、介護サービスの質を向上させることが、認定介護福祉士の主な役割と仕事内容になります。
また、地域包括ケアを進めるために医師や看護師、リハビリ職といった多職種との連携を図ることも重要な役目です。
地域の介護力を向上させるため、地域における施設やボランティア、家族介護者、介護福祉士の介護力を引き出す役割も担います。
これらの業務を行うため、専門家としての介護実践力だけでなく、介護チームのマネジメント力、他業種と連携する力が必要となる仕事といえるでしょう。
認定介護福祉士の資格を取得するメリット
認定介護福祉士の資格を取得するメリットは以下の2つです。
- 質の高い介護サービスを提供できる
- スキルの証明になる
現状では、資格手当がつくといった金銭的なメリットはありません。しかし、今後資格が普及していくにつれ、認定介護福祉士資格がないと就けない仕事ができたり、給与面で優遇されたりする可能性は十分にあると考えられます。
質の高い介護サービスを提供できる
認定介護福祉士は、チームのマネジメント、他業種との連携を行うことが業務内容です。
現場のリーダーの育成や、医師や看護師との連携を通して、より質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。
より上流の立場から教育を行うことで自身のレベルアップにつながりますし、現場のリーダーを育成することで、介護業界に貢献することができます。
スキルの証明になる
認定介護福祉士は介護福祉士よりも上位に位置づけられる資格です。
資格を取得していれば介護福祉士よりも高い知識やスキルをもっている証明となるため、就職や転職の際に有利に働くでしょう。
認定介護福祉士の取得条件
認定介護福祉士を取得するためには、まず以下の受講要件を満たしていることが前提となります。
- 介護福祉士の資格を取得している
- 介護福祉士取得後の実務経験5年以上
- 介護職員を対象とした現任研修100時間以上
- 研修実施団体のレポート課題・受講試験で一定の水準を修めている
前提条件をクリアした方は、認定介護福祉士養成研修Ⅰ類とⅡ類を修了し、申請書を提出することで認定されます。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類の取得条件
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類の取得条件は以下になります。
- 認定介護福祉士としての実務経験5年以上(※科目によっては実務経験を問わない場合あり)
- 現任研修100時間以上+レポート提出or試験(※200時間以上でレポートor試験が免除される場合あり)
また、必須ではありませんが、以下が望ましいとされています。
- 介護職の小チームのリーダーとしての実務経験
- 居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の取得条件
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の取得条件は以下になります。
- 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類の修了
- 介護職の小チームのリーダーとしての実務経験
上記に加え、居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の実務経験があると望ましいとされています。
認定介護福祉士養成研修について
認定介護福祉士養成研修の申し込み方法や、研修期間と費用について、詳しくご紹介します。
認定介護福祉士養成研修の申し込み方法
認定介護福祉士養成研修は、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が認証している実施団体の開講になります。
通常は都道府県の社会福祉協議会や介護福祉士会等が研修を実施しているため、申し込みを希望される場合は、自分が住んでいる都道府県ではどの団体が実施しているか確認が必要です。
また、個人ではなく法人単位で申し込むケースもあるので、勤務先で認定介護福祉士養成研修団体受講を行っていないかの確認をしてみましょう。
認定介護福祉士養成研修の期間と費用
認定介護福祉士養成研修の期間と費用は、実施する団体によって異なります。
認定介護福祉士のカリキュラムは全600時間となっており、修了するまでは1年半ほどを要する場合が多いです。
費用の目安は60万円です。高額ではありますが、条件を満たすと費用が大幅に免除されたり助成金を活用できたりする場合もあります。
認定介護福祉士養成研修のカリキュラム
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類・Ⅱ類のカリキュラムは以下の通りです。
実施団体によってスケジュールが異なるため、事前に確認しておきましょう。
【認定介護福祉士養成研修Ⅰ類】
認定介護福祉士養成研修導入 認定介護福祉士概論 15時間 医療に関する領域 ①疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ ①30時間 ②疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ ②30時間 リハビリテーションに関する領域 ①生活支援のための運動学 ①10時間 ②生活支援のためのリハビリテーションの知識 ②20時間 ③自立に向けた生活をするための支援の実践 ③30時間 福祉用具と住環境に関する領域 福祉用具と住環境 30時間 認知症に関する領域 認知症のある人への生活支援・連携 30時間 心理・社会的支援の領域 ①心理的支援の知識技術 ①30時間 ②地域生活の継続と家族支援 ②30時間 生活支援・介護過程に関する領域 ①認定介護福祉士としての介護実践の視点 ①30時間 ②個別介護計画作成と記録の演習 ②30時間 ③自職場事例を用いた演習 ③30時間
【認定介護福祉士養成研修Ⅱ類】
領域 受講科目 時間数 医療に関する領域 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ 30時間 心理・社会的支援の領域 地域に対するプログラムの企画 30時間 マネジメントに関する領域 ①介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 ①15時間 ②チームマネジメント ②30時間 ③介護業務の標準化と質の管理 ③30時間 ④法令理解と組織運営 ④15時間 ⑤介護分野の人材育成と学習支援 ⑤15時間 自立に向けた介護実践の指導領域 ①応用的生活支援の展開と指導 ①60時間 ②地域における介護実践の展開 ②30時間
認定介護福祉士を取得してスキルアップを目指そう
認定介護福祉士は介護福祉士の上位に位置づけられる民間資格です。まだ新しい資格ですが、今後の介護福祉士のキャリアパスとして期待されます。
認定介護福祉士はスキルアップや技術の証明にもなるため、介護のエキスパートを目指す方は取得を検討してみてはいかがでしょうか。