訪問介護の経験のある介護士の方は、2時間ルールという制度はご存知かと思います。
自宅での介護を行うという点において、重度訪問介護と居宅介護は似たサービスといえます。
そこで、重度訪問介護においても2時間ルールは適用されるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか?
この記事では重度訪問介護におけるサービスの概要、2時間ルールの内容や例外について解説します。
重度訪問介護の制度やルールについてしっかりと理解することで、利用者の家族から説明を求められた際にも自信を持って対応することができるでしょう。
この記事でわかること
- 訪問介護における2時間ルールの概要
- 重度訪問介護のルール
こんな人におすすめの記事です
- 重度訪問介護で働いている方
- 重度訪問介護のルールについて詳しく把握しておきたい方
重度訪問介護とは?居宅介護との違い
重度訪問介護と居宅介護は、ともに要介護者に対して、自宅でサービスを提供する介護サービスです。
重度訪問介護と通常の居宅介護の、それぞれの違いを以下の表にまとめました。
重度訪問介護 | 居宅介護 | |
---|---|---|
対象 |
・重度の四肢不自由者 ・重度の知的障がい者 ・精神障がいのある方 ・長時間の介護を要する方 |
・日常生活において支障のある障がい者 ・短時間の介護を要する方 |
概要 | ヘルパーが自宅を訪問し、身体介助や家事援助を行うサービス | |
支援内容 |
・見守り等の支援 ・身体介助 ・生活援助 |
・身体介助 ・生活援助 |
支援の方針 | 現場で必要な「総合的な支援」を行う | 事前に設定されたプランに基づいた支援を行う |
利用できる時間 |
・1回あたり制限時間が設けられていない ・必要に応じて24時間の連続介護が可能 |
・1回あたりの支援に時間制限がある |
2つを比較した場合の大きな違いが、1回あたりのサービスの利用時間数の上限です。
通常の居宅介護では、身体介護と家事援助にわけて、上限の時間が明確に設定されているのに対し、重度訪問介護では上限はなく、必要に応じた連続介護が可能になっています。
プランに縛られない支援内容からも、重度訪問介護は、訪問介護系サービスの中でも柔軟な対応が取りやすい特徴があると言えます。
訪問介護の2時間ルールとは?
訪問介護における2時間ルールとは、訪問介護事業所が1日に2回以上同じ利用者を訪問する際に、原則として1回目の利用と2回目の利用との間に、2時間以上の間隔をあけて訪問しなければならないという規定です。
もし2時間以上の間隔があけられていない場合は、実際には2回訪問していても1回のサービスとみなされます。
この際、実際の2回の訪問の所要時間を合算し、それに応じた介護報酬を算定することになります。
また、訪問介護の中には、身体介助や生活援助以外に、通院介助といった内容の介護もありますが、これには2時間ルールは適用されません。
訪問介護に2時間ルールがあるのはなぜ?
訪問介護の2時間ルールは、介護報酬の不正を防ぐために重要な規定です。
もし2時間ルールがないと、訪問する回数を増やすことによって、同じサービス利用時間でも、1回あたりの介護報酬単位を多く算定することが可能になります。
例として、20分の身体介助を2回行う場合で考えると、同じサービス内容でも以下のような差が生じることになります。
※前提として介護報酬は、20分の身体介助で250単位、40分の身体介助で396単位の請求が可能
- 2回の身体介助を1回の訪問で行うと、所要時間は40分になり396単位の請求が可能。
- 2回の身体介助を短時間で2回に分けて行うと、同じ所要時間40分でも、250単位×2回で、500単位の請求が可能。
2時間ルールがあることで、このような介護報酬の違いが生じず、サービス提供者と利用者との平等性を保つことができるようになっています。
また、介護士の訪問スケジュールが過密にならないためにも重要なルールといえます。
重度訪問介護に2時間ルールは適用されない
訪問介護において重要な2時間ルールですが、重度訪問介護には適用されません。
重度訪問介護では、事前に設定された介護プランのみでなく、見守りやプラン外であっても、現場で必要な支援を総合的に行います。
現場では柔軟な対応が必要になり、通常の訪問介護と比較してサービスの利用時間は長時間になります。
つまり、重度訪問介護において明確な空白の時間は存在せず、見守りや待機の時間も含めて支援を行っているという考え方です。
2時間ルールは介助と介助の間の時間を定める規定なので、重度訪問介護においては適用されません。
重度訪問介護の時間数に上限はある?
重度訪問介護の利用には、時間数の上限もありません。
利用する方の必要に応じて利用時間は設定され、24時間の連続介護を受けることも可能です。
ただし、長時間の重度訪問介護は市町村への申請が必要になるので、長時間の支援の必要性を自治体から認められる必要があります。
また、前提として、長時間の総合的な介護を必要とする方を対象とした介護サービスなので、原則3時間以上の連続した支援からとなります。
短時間の介護を複数回受けたい場合は、通常の居宅介護を利用することになります。
重度訪問介護以外で2時間ルールが適用されない3つの例外パターン
訪問介護で適用される2時間ルールですが、重度訪問介護以外にも以下3つのパターンで適用されません。
- 看取り期の訪問介護
- 指定訪問介護事業所の20分未満の身体介護
- 緊急時の訪問介護
あまり知られていない2時間ルールの例外を知ることで、訪問介護のルールについて、より理解を深めることができるでしょう。
看取り期の訪問介護
高齢化とともに、人生の最期の時間を、住み慣れた環境で家族と一緒に過ごしたいという方も増えています。
看取り期の介護は身体状況がより重度になり、水分補給や体位変換といった介助を要する機会も多くなります。
そのため、頻繁な訪問が必要になる看取り期の訪問介護において、2時間ルールは適用されず、サービス利用に2時間の間隔がなくとも、所定の単位数を算定することができます。
指定訪問介護事業所の20分未満の身体介護
自宅での介護を行う事業所の中で、市町村の指定を受け、介護保険を利用したサービスを提供できる事業所を「指定訪問介護事業所」といいます。
「指定訪問介護事業所」における20分未満の身体介護は、2時間ルールの適用外となります。
緊急時の訪問介護
利用者またはその家族等から、緊急に訪問を求められた際に、介護プラン外の訪問介護を行う場合があります。
その場合、1回あたり100単位の「緊急時訪問介護加算」が適用されます。
これは2時間ルールの適用外となるため、緊急での訪問の時点で、前の訪問と2時間以上間隔があいていなくても所定の加算が取れます。
重度訪問介護のルールを押さえて働こう
訪問介護を行っている介護士にとっては馴染みのある2時間ルールですが、重度訪問介護には適用されず、またその他の例外もあります。
重度訪問介護に2時間ルールが適用されない理由は、見守り中も支援を行っているという認識で、介助と介助の間の時間という概念がないためです。
また、重度訪問介護には通常の居宅介護のように上限時間がないため、長時間の連続した介護を行うことができるサービスです。
細切れの介護になる通常の居宅介護と比べて、利用者を包括的に支援することができる、介護士にとって魅力的な職場でもあります。
このように、重度訪問介護のルールや制度を理由まで知ることで、重度訪問介護が担っている社会的な役割が、より理解できるかと思います。
さらに、重度訪問介護のルールを把握することは、利用者やその家族が安心してサービスを利用できるだけでなく、重度訪問介護従業者自身を守ることにもつながります。
ルールや制度を意識しながら、介護を行っていきましょう。