入浴介助は、介護の仕事の中でも「きつい」と言われている業務の1つです。
仕事を任されて嬉しい反面、身体的な負担や介護拒否への対応による精神的な負担を感じることもあるでしょう。
そこで本記事では、入浴介助がきついと感じる理由や対処方法、負担を減らすコツについて解説しています。
入浴介助が少ない施設や働き方にも触れているので、入浴介助をきついと感じている方や、入浴介助が理由で介護士をやめたいと考えている方に役立つでしょう。
この記事でわかること
- 入浴介助がきついと感じる理由
- 入浴介助の負担を減らすコツ
- 入浴介助の少ない施設や働き方
こんな人におすすめの記事です
- 入浴介助がきついと感じる方
- 入浴介助が原因で介護職をやめたいと思っている方
介護業務の入浴介助がきつい理由
介護業務の入浴介助がきついと言われる理由として、主に「身体的負担」と「精神的負担」が大きいです。
具体的にどのような負担があるのか、以下で解説していきます。
身体的負担が大きい
浴室は、床が濡れていて滑りやすいだけでなく、高温多湿で体力が奪われやすい環境です。
浴槽やシャワーチェアーへの移乗介助は、裸の利用者を支えるので、ベッドや車椅子への移乗時よりも足腰に負担がかかります。
また、大規模な施設ではたくさんの利用者の入浴介助を行うので、より体力的にきつく感じる方もいるでしょう。
たとえば、100人が定員の介護施設で、週2回の入浴を提供する場合、7日間で200人分の入浴介助が必要です。
単純計算で1日に30名弱の利用者が入浴することになるので、午前と午後にそれぞれ約15名ずつの利用者を、2人〜3人のスタッフで介助することになります。
日曜日は非常勤のスタッフが少なく、入浴介助を行わない施設も多いので、実際介助する人数はもっと多くなるでしょう。
マスク対応や熱中症にも注意しながらの介助になるので、他の介助と比べても身体的な負担が大きい介助と言えるでしょう。
以下では具体的な例を挙げます。
身体的な負担
入浴介助において、特に身体的負担を感じやすい点は、体を支えたまま利用者を椅子へ移動することです。
裸の利用者を支えることは、通常の介助より足腰に負担がかかります。
また、1日に複数人を担当することや、長時間にわたる入浴介助も身体的に大きな負担がかかります。
そして、入浴介助は単に体を洗うだけではありません。
着替えや移動のサポートも重要な業務の一環であり、入浴時の身体的な負担に加えて、こうした細々とした仕事も負担増の要因になっていたりします。
手荒れなどの問題
介護業務の入浴介助では、手荒れに悩むケースが少なくありません。
入浴介助では、ボディソープを使って利用者の体を洗います。
低刺激のものでも、入浴介助の頻度が多ければ介助者の肌にもダメージを与えます。
手袋を使用できる場合もありますが、素手で行うとなると手荒れは避けられないでしょう。
手荒れを防ぐためには、水に強いハンドクリームを塗るなどの対策が必須です。
複数訪問による疲労
入浴介助は介護業務でも特に身体的負担が大きい業務であり、訪問先が複数になるとそれだけ多くの入浴介助を行うため身体的負担が増加します。
また、訪問先への移動も複数回行わなければならないため、入浴介助に加えて移動による疲労も避けられません。
同じ施設内での入浴介助であれば移動による負担を軽減できますが、訪問先をまわって入浴介助をする場合はさらに身体的負担が大きくなるでしょう。
精神的負担が大きい
入浴介助は以下のような事故が起こりやすく、細心の注意が必要です。
- シャワーチェアーに移る際に床に足を滑らせて転倒
- 浴室から脱衣室まで歩く際に床に足を滑らせて転倒
- 機械浴のストレッチャーから転落
- 浴槽内での溺れ
- シャワーチェアから立ち上がる際に、服を着ていない利用者に掴まるところがなく、濡れた体を支えられずに転倒
些細なミスや油断が事故につながるので、安全への配慮が必要です。
利用者によって要介護度や身体状況は異なり、注意するポイントも人それぞれです。
それが大きなプレッシャーになってしまうスタッフも多くいます。
また、入浴を拒否される方も多く、その方たちへどうやって入浴してもらうかを考え対応するのに疲れてしまうスタッフもいるでしょう。
精神的な負担が大きい理由には以下も挙げられます。
人間関係の難しさ
入浴介助は2〜3人で行うケースが一般的です。
複数人で行う場合、一緒に入浴介助をする人と連携を取り、役割分担をしてスムーズに、かつ利用者に負担をかけないように行うことが求められます。
しかし、人間関係が上手くいっていないと入浴介助がスムーズに進まず、気を使いすぎることで精神的な負担が増えます。
教育体制が整っていない
教育体制が整っていない現場では、身体的にも精神的にも負担を感じます。
教育体制が整っていないと、教育が不十分な新人と共に入浴介助を行うことになり、新人の面倒を見ながら利用者の介助を行わなくてはなりません。
また、自分が新人の立場の場合には、先輩に必死についていかなければならず、気を使いすぎて精神的な負担が増えます。
教育体制を整えることは、職員の負担軽減と共に利用者の安全性向上にもつながるため重要です。
訪問入浴のやりがい
訪問入浴は、チームで行う達成感や利用者様のリラックスした表情が見られる点が、訪問入浴のやりがいです。
ここでは、訪問入浴のやりがいについて具体的にご紹介します。
チームワークならではの達成感
訪問介護での入浴介助は複数人でチームを作って行うため、適切なサービスの提供のためにはチームワークが重要です。
チームで協力して最適なサービスを提供できた際の達成感は、チームワークが求められる訪問介護の大きなやりがいとなるでしょう。
ご家族様からの感謝
訪問入浴では、介護を必要とする人のご家族様と接する機会があります。
介護の知識の無い家族が入浴介助をする際の負担は、介護士が入浴介助をする際の負担よりも大きなものです。
訪問入浴のサービスを利用することで、家族による入浴介助の負担を減らせます。
そのため、介護を必要とする人だけではなく、そのご家族様から直接感謝を伝えられる機会は珍しくありません。
感謝を直接伝えられるとやりがいを感じ、モチベーションの向上につながるでしょう。
ご利用者様の感謝
訪問入浴では、ご家族様からだけではなくご利用者様から感謝をされることが多くあります。
もちろん、デイサービスや介護施設での入浴介助でも、感謝を伝えられることはあります。
しかし、訪問入浴では普段家族に入浴介助をしてもらっている利用者も多く、「家族の負担を軽減できた」などの理由から、感謝の言葉を頂くことがあるでしょう。
訪問入浴の仕事の流れ
訪問入浴は、基本的に以下の流れで行います。
-
- 入浴車でご自宅などへ訪問
- 入浴車で、ご自宅や施設など指定の場所へ訪問する。
-
- 入浴の準備
- まず浴槽を運び、利用者が入浴できる状態を準備する。
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- 脱衣・浴槽へ移動
- 利用者の脱衣を行い、利用者それぞれの方法で浴槽へ移動する。
-
- 入浴介助
- 複数人で入浴介助を行う。
-
- ベッドへ移動
- 衣服を着るサポートをし、ベッドへ移動する。
-
- 浴槽の片づけ
- 浴槽を片付け、車へ運ぶ。
入浴介助がきついときの5つの対処方法
入浴介助は身体的・精神的にきつい仕事のため、少しでも負担を和らげられるよう対処しましょう。
ここでは5つの対処方法を解説します。
どれも意識するだけで実行でき、入浴介助のきつさを和らげられるのでおすすめです。
脱水予防をする
入浴介助がきついときの対処方法の1つめは「脱水を予防する」ことです。
浴室内は高温多湿で脱水になりやすい環境です。
安全への配慮で集中して業務を行っているので、自分の喉の渇きに気づかないこともあります。
こまめに水分補給をして脱水を予防しましょう。
施設によっては入浴介助用の水分を用意していることもあります。
ない場合でも、自分でスポーツドリンクや麦茶などを用意しておくとよいでしょう。
ボディメカニクスを活用する
ボディメカニクスは少ない力で介護できる介護技術の1つで、身体介護を行う介護者の負担を減らすためのものです。
入浴介助中は利用者が服を着ていなかったり、体や床が濡れていたりして、通常とは違う環境下にあります。
正しい介護技術を身につけることで、介助するときの身体的負担を少なくできます。
最近では、スライディングボードのような福祉用具を活用する施設も増えているので、情報収集し、少しでも負担を減らす工夫ができると良いでしょう。
コルセットを着用する
腰痛予防の一環でコルセットを着用するのも有効な方法の1つです。
入浴介助では、普段よりも足腰に負担がかかるので、腰痛の原因にもなりやすいと言えます。
コルセットを着用すると、骨盤や背骨をサポートしてくれるので、業務に集中できます。
施設によってはコルセット代を負担してくれる場合もあるので、確認してみましょう。
注意点として、コルセットをしていても、体に負担がかかっていることは変わらないので、介助の前後にストレッチをするなどの体のケアも忘れずに行いましょう。
入浴拒否の理由を考える
認知症の有無にかかわらず、高齢者が入浴を拒否することはよくあります。
理由は、入浴のことを理解できていなかったり、裸になることへ抵抗を持っていたり、自分でできると思い込んでいたりとさまざまです。
否定や無理強いをせず「一番風呂です」「温泉があるから」など、良いイメージを持ってもらえるよう、声かけや誘導の仕方を工夫しましょう。
また、「〇〇さんがくるので綺麗にしておきましょう」というように「お風呂」という言葉を使わずに誘導するのも1つの方法です。
自宅でゆっくり休む
入浴介助は身体的・精神的に負担がかかるので、自宅で心身のケアを行うのも負担を減らす対処方法の1つです。
- お風呂にゆっくり浸かる
- マッサージ機のような疲労回復グッズを活用する
- 好きな音楽を聴いたり映画を観たりする
入浴介助をしていると、どうしても負担はかかるので、体をゆっくり休め、気分転換してから次の勤務に向かいましょう。
入浴介助の負担を減らす3つのコツ
ここでは、入職介助の負担を減らすコツを「入浴前」「入浴中」「入浴後」のシーン別に説明します。
入浴前
入浴前の注意点は、使用する物品や環境を整えておくことです。
事前準備をしておくことで入浴介助をスムーズに進められます。
特に新人の場合、洗いや更衣に時間がかかるため、以下のように事前準備をしておきましょう。
- 着替えやタオル類、その他の使用物品の用意
- 適切な室温や水温の設定
- 利用者のバイタルサインや表情などの確認
体調が悪そうであれば無理せず入浴を中止しましょう。
入浴中
浴室内は滑りやすいため、転倒や転落などの事故を防ぐために滑りにくい椅子を用意しましょう。
シャワーでお湯をかける時は、温度を確認しながら足元からかけます。
また、過度に介助をするとクレームにつながることもあるので、できることは利用者自身にしてもらい、精神的な負担を軽減させましょう。
最後に洗い残しがないか確認し、お湯に浸かってもらいます。
入浴後
脱衣室へ移動したり椅子に移ったりする際は、足の裏が濡れているため転倒に注意してください。
血圧変動によるめまいや、疲労による体調変化が見られることもあるので、安全のため椅子に座ってもらいます。
すぐに体を拭き、拭き残しがないか確認したら、プライバシーに配慮し、すぐに着衣を行います。
できることは自分でやってもらい、その間に介助者は片付けられるところは片付けましょう。
処方されている軟膏があればこのタイミングで塗布します。
また、入浴中に汗をかき水分を失っているので、入浴後は必ず水分補給をするように促しましょう。
入浴介助が少ない施設や働き方
どうしても入浴介助がきついと思う方は、入浴介助が少ない施設や働き方を検討するのがおすすめです。
利用者の人数や自立度、職員の体制や働く時間などで入浴介助の負担を減らせるので、自分の考え方やライフスタイルに合う働き方を考えて職場を選ぶのもよいでしょう。
訪問入浴
訪問入浴は、介護士と看護師が利用者の自宅を訪問し、組み立て式の浴槽で入浴介助を行います。
訪問介護の入浴と比べて重度の利用者の対応をすることが多いですが、介護士は2名で訪問するのが基本で、ゆっくりと介助できて負担は軽減できます。
訪問入浴についての詳しい説明は以下の記事を参照ください。
少人数制の施設
グループホームや定員が少人数の入所施設の場合は、入浴する利用者の数が少ないので、その分身体的負担が軽減します。
短時間型やリハビリに特化したデイサービスでは、入浴介助自体がない場合もあります。
自立度の高い有料老人ホーム
住宅型や健康型の有料老人ホームは、利用者の自立度が高く介助をほぼ行わなくて済むケースもあります。
仮に介助が必要な方でも、外部のヘルパーを利用するので、施設のスタッフが直接介助するケースは稀です。
ケアハウスやサ高住も同様なので、利用者の特徴を理解して職場を選ぶのもよいでしょう。
有料老人ホームの種類についての解説は、以下の記事を参照ください。
入浴専門スタッフのいる施設
施設によっては、入浴専門のスタッフを配置している場合もあります。
入浴専門のスタッフがいれば、介助はそのスタッフが行うので、浴室までの誘導や補助的な役割だけすればよく、身体的にも精神的にも負担は軽減されます。
夜勤専従
多くの施設では、基本的に夜は入浴を行わないので、夜勤専従であれば入浴介助を行うことはないでしょう。
ただし、夜勤を行うことでの身体的な負担や、生活リズムが崩れるなど、別の負担が生じる可能性もあるのでよく検討しましょう。
働き方を変えて入浴介助の負担を減らそう
入浴介助は身体的にも精神的にも負担がかかり、介護業務の中でも「きつい」仕事と言われています。
負担を減らすために工夫することもできますが、働き方や施設を変えるだけで負担が減ったり、入浴介助自体をやらなくて済んだりする場合もあります。
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