高齢化が進み、介護を必要としている人が増えている中、さまざまな介護の形が増えています。
居宅介護の一種として「小規模多機能型居宅介護」があります。
今回は、小規模多機能型居宅介護の概要やメリットとデメリットについて、ケアマネの業務内容とともにご紹介します。
- 小規模多機能型居宅介護とは
- 小規模多機能型居宅介護の概要やメリットとデメリット
- ケアマネの業務内容
- 居宅介護をご検討中の方
- 居宅介護のお仕事を探している人
小規模多機能型居宅介護とは
小規模多機能型居宅介護とは、1つの介護事業者がケアマネジメントや通い、訪問、宿泊など複数の支援方法を組み合わせた介護サービスの提供をしている施設のことです。
通い・訪問・宿泊のいずれかのみを行う、または通いと宿泊を組み合わせる介護事業者も存在しますが、介護サービス全般を総合的に提供しているものが小規模多機能型居宅介護です。
小規模多機能型居宅介護は、365日24時間、利用者に応じたサービスを提供しています。
地域密着型で小規模運営のため、利用者それぞれの状況に応じたきめ細やかな対応が可能です。
総合的なサービスを実施し、利用者一人ひとりにじっくりと向き合うため、介護職員の業務内容は多岐にわたります。
小規模多機能型居宅介護を利用できる人は、要支援1以上の要介護認定を受けている、かつ事業所がある自治体に住民票がある方です。
小規模多機能型居宅介護のメリット
小規模多機能型居宅介護は、サービスが充実していて利用者それぞれに合ったきめ細かな対応が可能です。
それ以外にも小規模多機能型居宅介護にはさまざまなメリットがあります。
以下で、小規模多機能型居宅介護を利用する主なメリットをご紹介します。
月額定額制である
介護保険は介護度別に支給限度基準額が決まっています。
複数の介護サービスを契約すると費用がそれだけかかり、支給限度基準額を超えてしまうおそれがあります。
しかし、小規模多機能型居宅介護は月額制で、支援度や介護度に合わせて基本金額が設定されているのです。
そのため、料金を気にすることなく利用できることがメリットです。
生活に合わせて柔軟なケアを行える
小規模多機能型居宅介護は、一つの施設で通い・訪問・宿泊すべてに対応しています。
複数の施設を利用したり、サービスや介護度の変化に合わせて毎回申し込む手間がかかりません。
また、単体のショートステイを利用する際は、数か月前から予約しなければならないケースがあります。
複数のサービスを提供している小規模多機能型居宅介護であれば、状況に応じて通いから宿泊への移行や宿泊から訪問への変更が可能です。
訪問・通い・宿泊を同じ職員が担当する
小規模多機能型居宅介護で担当者が変わらない理由は、少人数で運営しているためです。
環境の変化に敏感な利用者や、慣れない職員に担当されることに抵抗がある利用者もいます。
小規模多機能型居宅介護であれば、サービスを変更しても同じ職員に担当してもらえるため、環境や担当者が変わる不安やストレスがありません。
小規模多機能型居宅介護のデメリット
複数のサービスを1つの事業者が提供し、地域密着型で質の高いサービスが受けられる小規模多機能型居宅介護。
多数の利点がある一方で、いくつかのデメリットもあります。
以下で、小規模多機能型居宅介護を利用するデメリットをご紹介します。
併用できないサービスがある
小規模多機能型居宅介護は前述の通り、通い・訪問・宿泊のサービスを提供しているため、他の事業所が提供するデイサービス・訪問介護・ショートステイなどの介護サービスは併用できません。
そのため、一部のサービスに不満や不都合があっても、その部分のみを変更することはできないのです。
小規模多機能型居宅介護のサービスに含まれていない、訪問看護や訪問リハビリテーションの併用は認められています。
利用回数が少なくても同じ料金がかかる
小規模多機能型居宅介護は月額定額制です。
月額定額制は利用料を抑えられるというメリットがある一方で、利用回数が少なくても費用が変わらないというデメリットがあります。
利用者が介護サービスを利用する頻度に合わせて選択することが大切です。
それまで担当していたケアマネージャーが変更になる
今まで別の介護サービスを利用していた方は、小規模多機能型居宅介護に変更すると、担当ケアマネージャーも事業所に所属するケアマネージャーに変更しなければなりません。
これまでケアマネージャーとよい関係を築いていたり、環境の変化にストレスを感じたりする方にとって、ケアマネジャーの変更は負担になることも考えられます。
この問題については議論がなされており、将来的には担当ケアマネージャーに関するルールが変更になる可能性はあります。
小規模多機能型居宅介護に必要な人員
小規模多機能型居宅介護は、人員基準が設けられています。小規模多機能型居宅介護の人員基準は以下の通りです。
代表者 | 認知症対応型サービス事業開設者研修の修了者1人 | ||
管理者 | 認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した常勤・専従の者1人 | ||
小規模多機能型居宅介護従業者 | 日中 | 通いサービス | 利用者3人ごとに1人 |
訪問サービス | 1人以上 | ||
夜間 | 夜勤職員 | 1人以上 | |
宿直職員 | 1人以上 | ||
看護職員 | 1人以上 | ||
介護支援専門員 | 小規模多機能型サービス等計画作成担当研修の修了者1人以上 |
小規模多機能型居宅介護の利用定員は29名以下と決められています。
しかし、令和2年の厚生労働省の資料によると、小規模多機能型居宅介護事業者の半分以上で人手が足りていないと感じていることが現実です。
ケアマネージャーの業務内容
ケアマネージャーとは、利用者の生活状況や健康状態から最適な介護ケアやサービスを提供する職業です。
他の介護施設のケアマネージャーと業務内容に大きな差はありません。
主な業務内容は以下の通りです。
- ケアプランの作成と見直し
- 利用者や家族との連絡や相談
- 要介護認定の申請
- 利用者のモニタリング
- 介護報酬の給付
小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーになるには
小規模多機能型居宅介護には、専属のケアマネージャーが在籍しています。
以下で、小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーになるための要件や必要な資格をご紹介します。
ケアマネージャーに必要な要件
小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーになるためには、次の要件をどちらも満たしている必要があります。
- 介護支援専門員資格があること
- 小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修と認知症介護実践者研修を修了済みであること
介護支援専門員資格
介護支援専門員資格とは、ケアマネージャーになるための資格です。
資格取得試験を受けるには、次の条件を満たす必要があります。
- 保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・言語聴覚士などの国家資格を取得している
または生活相談員・支援相談員・相談支援専門員・主任相談支援員の従事者であること - 実務経験が5年以上かつ900日以上あること
試験は年に1回、10月の第2日曜日に行われます。受験用鋼は5~7月頃に配布されます。
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修は小規模多機能型居宅介護事業所や、グループホームの監理者に取得が義務付けられています。
各地方自治体で実施されており、要件や受講にかかる費用、受講方法は各自治体ごとに違うため、対象の自治体のホームページから確認しましょう。
一例として、東京都での受講条件は以下の通りです。
- 都内の介護保険施設や事業所に従事していること
- 認知症の人の介護に関する経験が2年程度以上あること
また、東京都では無料で受講できますが自治体によっては数千円かかる場合もあります。
講義・研修期間は1週間程度で、さらに自施設における実習が必要です。
小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修
小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修とは、指定小規模多機能型居宅介護事業所で働く計画作成担当者のための研修です。
受講には認知症介護実践者研修受講が求められるため、認知症介護実践者研修を修得してから小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を受講しましょう。
研修は各地方自治体で実施されており、実施頻度は地域ごとに違います。
実施が年1回の自治体もあれば、年数回ある自治体もあるため事前の確認が必須です。
また、研修期間は2~3日程度、研修費用は自治体ごとに違いますが2,000~15,000円程度です。
施設ケアマネージャーとの違い
ケアマネージャーには、居宅ケアマネだけではなく施設ケアマネもあります。
ここからは、居宅ケアマネと施設ケアマネの違いをご紹介します。
担当件数が少ない
居宅介護施設に所属するケアマネージャーは、担当人数を44人または49人までと決められているのに対し、介護老人福祉施設や介護老人保健施設に所属する施設ケアマネージャーは、最大100人まで担当できます。
居宅ケアマネージャーは担当人数が限られている分、一人ひとりにきめ細かなケアやサービスの提供が可能です。
移動が多い
居宅ケアマネージャーは、施設ケアマネージャーと比べて移動が多いという点も違いの一つです。
居宅介護施設に所属するケアマネージャーは、事業所から利用者の家への訪問が多いため、移動が増えます。
一方で、施設ケアマネージャーは施設を利用している人のみ対応するため、施設内で業務が完結します。
自分で判断する場面が多い
居宅ケアマネージャーは、ケアプランも施設ケアマネージャーよりもケアプランを自由に作成できるという特徴があります。
日程の調整やケアプランなど、自分自身で判断して決めることが多くあります。
経験が浅いケアマネージャーにとっては、自由度が高いことはプレッシャーとなることもあるでしょう。
小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーに関するよくある質問
小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーに興味があるものの、さまざまな疑問や不安な点が生じることもあるでしょう。
そこで最後に、小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーに関するよくある質問に回答します。
ケアマネージャーは兼務できる?
ケアマネージャーがほかの業務を兼務することはできます。
ケアマネージャーが介護業務を兼務することは珍しくありません。
ただし、ケアマネージャーと介護職員を兼務する際には、ケアマネージャーの業務に支障をきたさない範囲で行うことが大切です。
なお、施設の方針として兼務を認めていない場合もあります。
ケアマネージャーの給与はどれくらい?
働く地域や職場に応じて違いますが、月給は25万〜35万程度が一般的です。
参考として、厚生労働省が発表した以下参考資料によると、介護老人保健施設の平均給与額は397,600円、訪問介護事業所は364,940円、小規模多機能型居宅介護事業所は361,010円でした。
参考:厚生労働省
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省老健局老人保健課
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ケアマネージャーの勤務時間は?
利用者やその家族との面談、モニタリングの実施などは日中に行うため、勤務時間も日中になることが一般的です。
ケアマネージャーは日中のみの勤務が可能なため、介護業界で働きたいものの夜勤を避けたい方にもおすすめです。
ただし、24時間運営の施設で介護職を兼務する場合は、夜勤を求められることもあります。
小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーは大変?
小規模多機能型居宅介護はケアマネージャーの所属数が少なく、業務は多岐にわたり、相談できる人も多くありません。
求められる知識の幅も広く、業務内容の幅や量から見ると、小規模多機能型居宅介護ケアマネージャーは楽な仕事とはいえません。
一方で、基本的に夜勤はなく、日中の業務がメインであるため、生活のリズムは作りやすいといえます。
非常勤でもケアマネージャーになれる?
非常勤でも小規模多機能型居宅介護のケアマネージャーになることは可能です。
必要な資格を取得していれば、正社員以外のパートやアルバイトとしての勤務も認められます。
また、業務に支障がなければ他施設との兼務も可能です。
非常勤で複数の施設のケアマネージャーとして勤務する働き方もできます。
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まとめ
通い・宿泊・訪問など複数のサービスを1つの事業者が提供している小規模多機能型居宅介護。
地域密着型で、一人ひとりにきめ細かなサービスを提供しています。
ケアマネージャーとして働くためには、必要な要件や資格を満たす必要があります。
小規模多機能型居宅介護の業務内容について正しく理解した上で、ケアマネージャーとして働くか検討してみましょう。
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