介護職の給料は「低い」と言われることが多いので、今後上がるのか気になる方もいるのではないでしょうか?
いくら興味や関心のある仕事でも、給料が低いと仕事を続けることに対して不安を感じるかもしれません。
この記事では、介護職の給料の最新動向やその理由、介護職として給料を上げる方法についてわかりやすく解説しています。
給料の今後の動向について理解していただき、安心して介護の仕事をしていただけると幸いです。
この記事でわかること
- 介護士の給料の動向
- 介護士の給料を上げる方法
こんな人におすすめの記事です
- 介護士の給料が今後どうなるのか知りたい方
- 介護士として給料をアップさせたい方
介護職の給料は上がる?
介護職の給料は、近年の動向を見るに、この先も上がる可能性が高いです。
その理由について、以下で解説します。
近年の給料の動向
以下の表に過去5年間の介護職給料の推移についてまとめました。
正社員 パート 令和4年度 318,230円 120,330円 令和3年度 316,610円 113,490円 令和2年度 315,850円 112,500円 平成30年度 304,430円 108,280円 平成29年度 293,450円 98,430円
近年の介護職の給料は、正社員・パートともに年々増加傾向にあります。
平成29年度から令和4年度まで比較すると正社員では24,780円増加しており、パートにおいても21,900円増加しています。
国としてもこれまでに以下のような処遇改善の取り組みをしてきました。
平成21年 介護職員処遇改善交付金の創設
→月額+1.5万円相当平成24年 介護職員処遇改善加算の創設
→月額+6千円相当平成27年 介護職員処遇改善加算の拡充
→月額+1.3万円相当平成29年 介護職員処遇改善加算の拡充
→月額+1.4万円相当令和元年 介護職員特定処遇改善加算の創設 令和4年 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の交付(ベースアップ加算へ移行)
これらの処遇改善の取り組みの結果、介護職の給料の増加につながっています。
今後の賃上げ施策
令和4年度の介護保険改正に伴い、介護職員の処遇改善についてもさまざまな議論がされています。
具体的な施策についてはまだ発表されていませんが、令和4年1月の社会保障審議会介護給付費分科会においても「全産業平均の水準を目指して、介護分野全体の賃金底上げを徹底すべき」という意見が挙げられています。
また、令和5年1月26日の国会の質疑応答でも岸田総理は、介護職員処遇改善の取り組みの継続を明言していました。
そして、令和6年度の介護報酬改定により、「処遇改善加算」「得意艇処遇改善加算」「ベースアップ加算」の3つが統合されることになりました。
令和6年6月以降、処遇改善に係る加算の一本と加算率の引き上げにより、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへとつながるよう取り組みが進む予定です。
新加算には大きく分けて3つの要件を満たすことが必要です。
特に月額賃金改善要件Ⅰについて、令和7年度からの新加算要件となります。
新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てることが決められているため、賃上げ対象となる事業所も多くあるのではないかと推測されます。
これらのことからも、介護職員の処遇改善への取り組みは今後も継続され、賃金が上がることが期待できるでしょう。
賃上げをする理由
介護職の賃上げを積極的に行うのは、人手不足解消のためです。
令和4年度介護労働実態調査によると、全体の介護事業所のうち63%が人手不足を感じています。
また、厚生労働省によると2025年までに32万人、2035年までに69万人の介護職員を確保する必要があると発表しています。
今後も深刻な人手不足が予想されるため、賃上げをして介護職員の確保と定着を図る必要があるのです。
介護士の平均給料
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果による介護職全体の平均給料は、318,230 円です。
介護職の給料は、資格の有無や施設形態によっても違いがあります。
資格別の平均給料を比較すると、介護支援専門員の資格保有者の給料が376,240円であり、保有資格なしの場合は270,530円とその差は約10万円です。
施設形態別では、特別養護老人ホームが一番高く347,520円、それに対して通所介護が一番低く276,680円とその差は約7万円になります。
保有資格や施設形態による平均給料の違いについて理解した上で、職場選びを検討すると良いでしょう。
介護士の平均給料についての詳しい説明は、以下の記事を参照ください。
介護職の給料が安すぎると言われる理由は?
介護職の処遇改善に向けたさまざまな取り組みがされ平均給料も上がってきていますが、全産業の平均給料に比べるとまだ低い状況です。
介護職の給料が安いと言われる理由は、以下の3つが考えられます。
- 介護報酬の上限が決まっている
- 介護士の専門性が評価されない
- 施設の内部留保が多い
それぞれについて詳しく解説します。
介護報酬の上限が決まっている
介護サービスの利用料金は、介護報酬によって上限が決まっているため、必然的に施設の収益を上げることが難しい現状があります。
介護報酬とは、介護サービスを提供した事業所に対して、対価として支払われる報酬のことです。
介護報酬は、介護サービスごとに金額が決まっており、事業所独自で設定できません。
さらに介護報酬は介護保険制度の改正ごとに見直しがされ、場合によっては報酬が下がることもあり、そうなると施設の収益も下がってしまいます。
これらのことから、介護事業所としても思うように収益が伸びず、介護職員の給料を上げたくても上げられない現状があるのです。
介護士の専門性が評価されていない
介護の仕事は、専門的なスキルが求められる一方で、その専門性が評価されていない課題があります。
その理由は、無資格でも介護職として仕事に就くことができるからです。
シーツ交換や清掃など生活援助は専門的なスキルは不要のため無資格でもできます。
利用者の体に直接触れる身体介護においても、法的には可能です。
これらのことから介護職の専門性が曖昧になり評価されにくい状況となっています。
専門性が評価されなければ、高い賃金を支給されることも難しいでしょう。
近年、介護職のキャリアアップ制度が見直され、少しずつ適切な評価を受けられるようになってきています。
専門資格を取得することで、スキルの証明となり、適切な評価を受けられるようになるでしょう。
施設の内部留保が多い
介護職の給料が低いと言われる要因として、介護事業所の内部留保が影響しているケースもあります。
内部留保を簡単に説明すると、事業で得た利益で社内に蓄積されたお金のことです。
厚生労働省によると特別養護老人ホーム1施設当たりの実在内部留保額は約1.6億円になります。
内部留保は、健全な施設運営のために必要な財源でもあるため一概には言えませんが、金額が多く職員への還元が少ないことも給料が低い要因の一つとして挙げられます。
その課題を解決するために、2024年から経営の透明性を高める施策として、介護施設・事業所に詳細な財務状況の報告・公表の義務付けが決定しました。
これにより、財務状況が見直され、給料が上がる施設も出てくるかもしれません。
介護職の給料を上げるための4つの方法
国としても賃上げの取り組みをして全体的な平均給料が上がっていますが、より給料を上げる方法を4つご紹介します。
- 資格を取得する
- 夜勤回数を増やす
- キャリアアップする
- 条件の良い職場に転職する
それぞれについて解説します。
資格を取得する
専門的な資格を取ることにより、資格手当が支給され給料アップが期待できます。
公益財団法人「社会福祉振興・試験センター」の介護福祉士就労状況調査によると、介護福祉士の資格手当は平均9,055円、社会福祉士の資格手当は10,827円となっており、年間に換算すると約10万〜14万円給料が上がることになります。
また、資格を取得することでスキルの証明になります。
キャリアアップや転職にも有効になるので、資格取得に挑戦してみましょう。
ただし、職場によっては資格手当が支給されないところもあるので注意が必要です。
夜勤回数を増やす
介護の夜勤をすると、夜勤手当が支給され給料を上げることができます。
2022年介護施設夜勤実態調査結果概要によると介護職の平均夜勤手当は、6,011円です。
夜勤をすると夜勤手当以外にも、深夜手当も支給されます。
深夜手当とは、22時〜翌日5時までの深夜時間の労働に対して時給の1.25倍の賃金が支給されるというものです。
これらの手当により、給料アップが期待できます。
ただし、夜勤は体にも負担のかかる働き方なので、体調管理には十分注意しましょう。
キャリアアップする
介護主任や介護リーダー、管理職などの役職へキャリアアップすることで役職手当の支給や基本給のアップが期待できます。
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、管理職以外の職員の平均給料が308,630円なのに対して、管理職は356,870円になります。
約5万円の差があり、年間に換算すると約60万円もの大きな差になります。
それだけ仕事は大変になるかもしれませんが、自己成長にもつながるでしょう。
日々の業務において実績を積み、キャリアアップを目指してみてください。
条件の良い職場に転職する
給料を上げるためには、より条件の良い職場に転職することも有効な手段です。
介護施設に勤めると、人手不足の現状からその職場から辞めにくく感じ、転職を躊躇してしまうことも多いかもしれません。
しかし、転職することで「給料アップが期待できる」「新しい環境での仕事を通して自己成長につながる」などのメリットも多くあります。
令和3年雇用動向調査結果の概要によると、34.6%の方が前職の賃金に比べ「増加」したと回答しています。
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これまで介護職の処遇改善のために、さまざまな施策が実施されてきました。
今後も介護職の給料を全産業平均まで引き上げることを目標に、処遇改善の取り組みがなされていくでしょう。
国の取り組みを待つことも良いかもしれませんが、専門資格を取得したり、より良い条件の職場へ転職したりすることでさらに給料アップが期待できます。
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