長く働ける仕事として介護業界への転職を検討しているものの、少子高齢化に伴う介護士の負担や介護業界の課題が気になるという方は少なくないのではないでしょうか。
また、課題を解決するための取り組みについても気になるでしょう。
そこでこの記事では、介護業界の課題や課題解決のための取り組みについて解説していきます。
介護業界の将来性に関しても言及していますので、最後まで読んで納得したうえで介護職への転職を決めてください。
この記事でわかること
- 介護に関する4つの社会問題
- 介護業界の現状と今後の課題
- 課題解決のための取り組み
- 将来性の有無
こんな人におすすめの記事です
- 介護業界の現状と今後の課題について知りたい方
- 介護業界の将来性について知りたい方
介護に関する4つの社会的課題
介護に関する主な社会的課題として、以下の4点が挙げられます。
- 独居の高齢者の増加
- 老老介護や認認介護の増加
- ヤングケアラーの問題
- 社会保障の財源の不足
それぞれについて確認していきましょう。
独居の高齢者の増加
内閣府が公表している「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の人口に占める独居の方の割合は、男女ともに年々増加傾向にあるとされています。
2000年には男性が8.0%、女性が17.9%だった高齢者の独居の割合が、2020年には男性が15.0%、女性が22.1%へと増加がみられました。
内閣府は、高齢者の独居の割合は今後も増加していくと予想しており、2035年には男性が20.8%、女性が24.5%になるといわれています。
ここから、約10年後には、65歳以上の約半数が独居の高齢者となるといえるでしょう。
高齢者の独居には、自覚がないまま認知症が進行する、犯罪に巻き込まれやすいなどのリスクがあります。
また、元気なうちは一人でできたとしても、高齢になるにつれて日常生活動作への介護介入は必要となってくるでしょう。
老老介護や認認介護の増加
近年介護に関する課題として重要視されているのが、老老介護や認認介護問題です。
老老介護とは、65歳以上の高齢者の介護を65歳以上の高齢者が行うことをいい、認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者の介護を行うことをいいます。
厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査の概況」によると、2001年には65歳以上同士の同居の割合の合計は40.6%でした。
しかし、2022年には63.5%に増加しており、今後も増加していくことが予想されるでしょう。
高齢になると身体機能は低下するため、老老介護には介護者の身体的・精神的負担の増加といった問題があります。共倒れのリスクもあるでしょう。
さらに、外出の機会が減ることによって、外部からの刺激がなくなり、認知症になってしまうリスクも増加します。
ヤングケアラーの問題
こども家庭庁では、ヤングケアラーを「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと」と定義しています。
厚生労働省では、中高生に対しアンケート調査を行い「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(案)」として公表しています。
上記によると、アンケート調査を行った13,669名のうち709名が家族の世話をしており、そのうち121名が祖父母の介護を行っているという結果になりました。
また、祖父母の介護を行っているヤングケアラーの中で福祉サービスを利用していると答えたのは、19.8%のみでした。
しかし、上記の結果は氷山の一角でしかありません。
ヤングケアラーは、家庭内のデリケートな問題のため、表面化しにくいといわれています。
こどもの健やかな成長と機会を奪うヤングケアラーの問題は、決して見逃すことができません。
社会保障の財源の不足
社会保障とは、子供から高齢者まで全国民の安心や生活の安定を支えるためのセーフティーネットです。
財務省の「これからの日本のために財政を考える」によると、少子高齢化に伴い社会保障の歳出は増加傾向にある一方、歳入は減少傾向にあります。
75歳以上になると一人当たりの介護・医療費が急増するため、団塊の世代が75歳以上になる2025年(2025年問題)には、社会保障の財源不足がさらに深刻となるでしょう。
社会保障の基本は保険料での支えあいですが、保険料のみではまかなえない部分を、税金や借金で補っているのが現状です。
税金や借金での社会保障の財源確保の割合は、今後も増加していくでしょう。
社会保障は国の最大の支出項目で、一般会計歳出の約1/3を占めているため、非常に深刻な問題です。
介護業界の現状と現場の問題
令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要についてによると、介護業界全体の人手不足感は令和元年から2年連続で改善傾向にありました。
しかし、それ以降は増加傾向に転じ、令和4年度の人手不足感は66.3%となっています。
、介護現場の労働条件・仕事の負担に関する悩みに関しても「人手が足りない」が、全体の52.1%を占め、最多となっているのが現状です。
さらに「有効求人倍率(介護関係職種)の推移」によると、介護関係職種の有効求人倍率は3.64%と、全職業計の1.03%を大きく上回っていました。
このような結果から、介護現場の現状と問題は慢性的な人手不足であるといえるでしょう。
介護業界の現状と現場の問題に関しては、以下で詳しく解説しています。
介護業界が抱える今後の課題4つ
介護業界が抱える今後の課題は、大きく4つに分類されます。
介護業界で働いていくためには、必ず知っておきたい内容です。
それぞれについてみていきましょう。
少子高齢化社会の加速による介護難民
介護難民とは、介護サービスを受けたくても受けられない方を指します。
介護難民は少子高齢化によって需要と少子高齢化による需要と供給のバランスが成り立たないことが原因で生じており、直近では2025年問題が迫っています。
また、経済産業省によると、約10年後(2035年)には、要介護(要支援)認定者数が約900万人にのぼり、介護士の人手不足は68万人にものぼる予想です。
したがって、介護難民の割合は今後も増加していくといえるでしょう。
低賃金
厚生労働省が公表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護士の平均年収は約379万9,320円でした。
一方で、国税庁が「令和3年分民間給与実態統計調査」で公表した給与所得者の平均年収は約443万円で、介護士の年収が全体平均より低いという結果になりました。
介護士の平均給料は、資格の有無や地域などによって異なりますが、介護業界でも上位資格にあたる介護福祉士であっても平均年収は約394万4,640円です。
介護士の給料が平均より低賃金である理由は、以下で解説しています。
また、資格や地域などの状況別の介護士の平均給料について知りたい方は、以下を参照ください。
きつい労働環境
介護士の人手不足が解消しない原因のひとつとして、きつい労働環境があります。
介護の仕事は、身体介護や不規則勤務などの身体的負担だけではなく、他職種との連携や利用者と関わりといった人間関係による精神的負担も大きいことが特徴です。
労働環境がきついことに加えて低賃金であるため、職員のモチベーションが上がらず、慢性的な人材不足につながっています。
介護の仕事がきついといわれる詳しい理由については、以下の記事をご覧ください。
社会的評価の低さ
介護職には、利用者個々に合わせた介護サービスの提供が求められます。
そのため、介護に関する豊富な知識や高い介護技術が必須です。
しかし、介護職の中には無資格・未経験でも可能な仕事もあることから、社会的評価が伴わないのが現状です。
社会的評価が低いことが低賃金の要因のひとつにもなっており、人手不足が解消されません。
介護業界の課題解決のための取り組み
介護業界の課題を解決するための対応策として、以下のような取り組みが行われています。
- ITシステムやユニットケア導入による業務負担の軽減
- 介護士のメンタルケア
- 介護の資格取得支援
- 政府による処遇改善 など
介護の仕事は身体的介護や生活介助のみに限らず、レクリエーション企画や会議、記録など多岐にわたり、非常に負担が大きいです。
そこで、ITシステムの導入による作業工程の削減や、10名程度の少人数の利用者を介護するユニットケアを導入することで、業務負担の軽減を目指しています。
ほかにも、メンタルケアによる精神的負担の軽減や、資格取得支援による介護士のモチベーションアップにつながる対策も行われています。
さらに政府は、人材不足の最大要因ともいえる低賃金解消のための処遇改善にも取り組んでおり、今後介護士の給料は上がることが予想されるでしょう。
課題解決のための対応策に関しては、以下を併せてご覧ください。
介護業界に将来性はない?
今後ますます少子高齢化が進むことから、介護業界の需要はさらに高まっていくといえるでしょう。
また、2025年4月からは65歳の定年が義務付けられました。
国民の健康寿命を延ばすための取り組みとして、国は70歳までの就労支援に取り組んでいることから、今後定年のさらなる延長も予想されます。
介護の仕事は、送迎ドライバーや宿直など、現場の介護士以外の仕事も多くあり、高齢者の就職場所としても将来性があるといえるでしょう。
介護業界の需要は今後高まる予想!課題を理解したうえで転職をしよう!
今後、少子高齢化がますます進んでいくことから、介護業界の需要は高まっていくことが予想されます。
介護業界にはさまざまな課題がありますが、課題解決のための取り組みも行われており、介護業界の将来は明るいといっても過言ではないでしょう。
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