介護業界の離職率は高い?低い?実態を数字から読み解く

介護職員に「きつい、汚い、給料が安い」といったイメージをお持ちの方もいることでしょう。大変なイメージのある仕事ですが、実際に離職率も高いのでしょうか?

結論として、介護職の離職率はとても高いというわけではありません。
この記事では、介護職の採用率・離職率についてと、他職種と比較した際の離職率について説明します。

この記事でわかること

  • 介護職の離職率の推移
  • 介護職の離職率を低下させるための取り組み
こんな人におすすめの記事です

  • 介護職の離職率を知りたい方
  • 介護業界の現状について調べたい方
目次

介護業界の離職率は高い?

令和4年雇用動向調査結果によれば、産業計での入職率は16.2%、離職率は15.0%です。そのうち医療・福祉の入職率は14.4%、離職率は15.3%となっており、入職率と比較すると離職率のほうが若干高くなっています。
ただし、これには医療分野と、介護職以外の職種も一部を含んでいるため離職率が高い数値となっているようです。
一方、より実態を把握するために公益財団法人介護労働安定センターが行なっている同年度の介護労働実態調査によると、介護従事者の入職率は16.2%、離職率は14.4%であり、入職率が離職率を上回っていることが分かります。
これらのことから、他の職種と比較してみても入職率と離職率の差は1.8%と小さく、介護職の離職率が高いとは言い切れないことがわかります。介護の離職率が高いと良く言われることがありますが、それは過去の印象が根強く残っているためかもしれません。

参考:
令和4年雇用動向調査結果の概況 12ページ|厚生労働省
令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要|公益財団法人 介護労働安定センター

離職率の推移

令和4年(2022年)の産業別入職率・離職率グラフ

介護職の離職率は平成17年度に20.2%でしたが、年々減少傾向にあり令和4年度には14.4%となっています。
採用率も同様に減少しており平成17年度に28.2%、令和4年度に16.2%です。
採用率と離職率の差を見ると、平成17年度では8%、令和4年度では1.8%であり、採用率と離職率の差が縮小傾向にあることが分かります。

離職率は横ばいなのに採用率が下がる理由

離職率は横ばいなのに、採用率が低下していることに対して疑問を持たれる方もおられるのではないでしょうか?
これには、2つのパターンが考えられます。

  1. 介護職員への求人応募者が減少している
  2. 採用側の介護職の採用基準が整えられるようになり、必要な採用のみを行っている

令和4年度の時点で介護サービスにおける有効求人倍率は3.6倍となっており、人材不足であることが分かります。求人応募がそもそも少なく、採用率も比例して少なくなっていると思われます。
一方で、平成12年に介護保険法が施行されて以降、介護サービスに関する決まり事が徐々に整備され、介護士に求められる専門性も見直され続けてきました。その結果介護職員の処遇改善として賃上げができるような仕組みも作られました。
施設側としても、無資格・未経験の介護職を誰でも就業させるというよりも、介護の知識や技術があったり、意欲や適正のある人材を見極めて採用する流れが作られた可能性も充分にあると推測します。

離職理由の上位は仕事内容ではない

離職率は平成17年の20.2%から令和4年度の14.4%と、減少傾向にはあるものの採用率と比べると横這いです。
では離職理由として多いものは一体なんでしょうか?順番に見ていきましょう。

1位:職場の人間関係
2位:法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満がある
3位:他に良い仕事・職場があったため

自分に向かない仕事だったことを退職理由にしている人は10位と非常に少なく、仕事内容や給与面よりも、職場の環境面を重視する理由が多いようです。
これらの要因は今後も継続して上位に入り込むと考えられるため、離職率が今後も大きく下がることは無いのかもしれません。
環境面を理由にするということは、比較できる対象があるとも取れます。介護保険法の制定から介護施設数も介護サービスの利用者も増加し続けています。
多くの就業場所があるため、介護職は自分の職場と他の職場とを比較し、転職を考えやすい業界なのでしょう。

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参考:
令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況(PDF中、21ページ)
介護分野をめぐる状況について|厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 第176回(R2.3.16)資料1

介護業界でも得意に離職が多いのはどのサービス

サービスごとに比較

訪問介護員とその他介護職とを比較した際の離職率が低いのは訪問介護員となっています。
また、訪問介護員は現行の職場で働きたいと回答している割合が、67.8%と、その他介護職の54.0%と比較しても非常に高いことが分かります。
このような結果になる理由として下記が考えられます。

  • 訪問介護員は有資格者であることが就業の前提のため、就業後のギャップが少ない
  • 訪問介護サービスは夜勤が無い職場がほとんどである
  • 利用者の自宅への訪問の場合1対1の介護サービスとなるため、人間関係の軋轢が少ない環境である
  • 非常勤の場合、働きたいタイミングで働くことができる
  • 在宅介護のため介護度の高い方の介護が少ない

介護の大変さとして、夜勤を含む不規則な勤務体系が身体に合わない、介護度の高い方の介護が身体的に負担がかかるなどがあります。
特別養護老人ホームや有料老人ホーム等と比較すると、それらが少ない環境で働くことのできる訪問介護員は働きやすい職場となっているのでしょう。

離職率が高い=ブラック?

採用率を離職率が上回っている場合、就業に心配の残る職場と思っていいでしょう。
同程度以下であれば、1人の方が退職され、そのために1人を採用して運営しているということになりますので一概にブラックとは言えません。
現状、介護業界の全体の離職率は採用率を下回っているとはいえ、同程度の数値となっていることから余剰の採用ができている環境ではないのでしょう。
介護職員が不足していると感じている施設の割合は全体の70%という回答も得られており、採用活動が難航していることが伺えます。
転職をする場合、求職者は求人情報や面接の雰囲気から、応募先がブラックかどうかを見極めることが重要です。
キャリアアドバイザーとして介護職問わず求人を見てきた目線と、面接時に受けた印象などから、見極めのポイントを解説していきましょう。

「ヤバイ」求人を避ける方法〇選!

いつも掲示されている求人は要注意

求人サイトを確認した際に、いつも見かける求人は要注意です。
特に求人の最終更新日が古いものは、ずっと応募が無い求人である可能性が高いです。
更に求人内容が一向に変わっていない場合、採用担当者が日々の業務が多忙であり見直しをできていないのかもしれません。もしくは、給与をそれ以上変更できない状況であることも考えられます。

採用担当の「忙しさ」に注目

気になる求人であれば、応募後の採用担当者からのレスポンスが何日以内にあるのかを気を付けて確認しましょう。
また面接時にすぐ採用と言われたり、採用担当者側から面接日翌日~3日以内に就業開始ができるかと提案された場合は、かなりの人手不足の可能性が考えられます。
その場合は、面接後の施設見学で職員の人数を見たり、電話や介護職呼び出しのインターホンが鳴りっぱなしになっていないかを確認したりと、施設の「あわただしさ」に注目してみると判断材料が増えるかもしれません。採用担当者が離席する、面接時間に遅れてくる、夜勤明けや勤務前に面接をしているという状況も人手不足の可能性が高いです。

あいまい求人は避ける

求人の内容が詳細に書かれているものと、ざっくりと書かれているものがあると思います。
特に給与額について総支給額(月給)のみ書かれていて、その詳細が記載されていないものは確認が必要です。
蓋を明けてみれば、基本給がとても低い、みなし残業代込み、夜勤手当込みで掲載をしているという求人もあります。たとえば、月5回の夜勤想定で月額2万5千円(1回あたり5千円)の夜勤手当が給与に含まれている場合、夜勤がなくなるとその分の収入が減ることになります。
給与額について不明瞭な点がある場合は応募前に確認をする、もしくは確認をしてもらえるエージェントサービス(https://kaigolink.com/agent-service)を利用するのがおすすめです。
介護職はシフト制求人も多いため休日の確認も大切でしょう。求人には完全週休二日制、週休二日制、日曜休みなどが記載がされています。年間休日と併せて、自分がどのような働き方と休日の取り方ができるのか予め確認してから応募をしましょう。

福利厚生をチェック

介護士としてキャリアアップを考えている方であれば、介護福祉士の資格取得支援制度があったり、取得後に資格手当や処遇改善手当の増額があるかなどをチェックしておきましょう。
介護士として長く働く上でのモチベーションの一つとなることでしょう。
ご家族がいる方であれば扶養手当の有無を確認したり、一人暮らしの方であれば家賃手当があるかを確認するのもおすすめです。

その他

法人にホームページがある場合は、お知らせ欄やブログ記事の最終更新がいつになっているのかを確認してみるのも一つでしょう。
1年以上更新が無い場合、ホームページの更新を行う担当者が離職した、多忙で更新する時間もない、あるいはホームページ制作会社との委託契約を解除してしまったなどといった理由が考えられます。またそれに対して、周囲が気づいていない、気づいていてもフォローができていない状況という可能性が高いです。
応募前には求人だけでなく、応募先のホームページも一度確認してみるといいかもしれません。

まとめ

介護職の離職率は、他業種と比較してみても決して高くはない数字となっています。
しかし、既に介護職として就業している方の中で、現在の職場で勤続したいと考えている割合も常に6割前後となっており、離職を考える人が少なくはない職種であるのかもしれません。離職の理由としては人間関係や、法人や施設の方針を上げる方が多いため、ご自身の環境に合致する職場であれば長く就業できる職種と言えるでしょう。
離職の理由として、介護職としてのスキルアップを目的としている方も一定数いらっしゃいます。
介護サービスが多岐に渡り展開し続けてきたことで、各法人・施設ごとの理念や雇用条件も多くあり、自身の状況と比較した際に他の場所での就業を考えやすい市場とも言えるでしょう。
転職を考えている方は、カイゴLINKを利用してご自身の希望にぴったりあった求人を探してみてはいかがでしょうか?

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監修者

【保有資格】
・社会福祉主事任用

【職歴】
・知的障害者施設 支援員 : 約3年
・介護・福祉のキャリアアドバイザー : 約3年
・介護求人サイト「カイゴLINK」サポート業務 : 約2年

【経歴】
知的障害者入居施設にて支援員として勤務し、直接介護や支援に携わる。
サービス管理責任者と共に個別支援計画の作成やアセスメントの実施を行う。
福祉業界での従事者である経験を活かし、全国に福祉サービスを展開する株式会社SOYOKAZE(旧 株式会社ユニマットリタイアメントコミュニティ)の子会社である株式会社SOYOKAZE Staff Company(旧 株式会社ユニマットスタッフカンパニー)キャリアアドバイザーとして従事。

キャリアアドバイザー時代は3年間の累計約2,600名を超える介護・福祉に関わる職種へ就業を希望される方を対象に、希望されるキャリアアップのための就業先提案やアドバイスを行う。
自社内での介護・福祉に特化した求人サイト「カイゴLINK」の新サービス提供開始に伴い、ご利用検討をされる法人様へ各種の提案を行っている。

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